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米大統領選当日、市場に放たれるのはトランプ砲orヒラリー砲? 両者の経済政策と市場の動きを徹底分析

トランプが勝利すれば近い将来120円越えの相場もありえる!

飯田:
 一方、コメントでも触れている方もいましたが、トランプ勝利の場合、2018年の相場が120円~125円という数字を弾き出しています。これはどうしてなのでしょうか?

今泉:
 先ほど紹介したトランプさんの経済政策の中にあった「本国投資法」というものがあったかと思うのですが、これを行うとこの数字になる可能性があるということです。

飯田:
 それはどういった法律なのでしょうか?

今泉:
 アメリカは過去に本国投資法を行っているんですね。多国籍企業が海外に滞留させている所得……戻さなければ税金はかからないのですが、通常は本国に戻すと35%の税金がかかってしまいます。ところがいくつかの条件があるものの、2005年に限って35%の税金を5.25%に引き下げたんですね。

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今泉:
 このときの相場の動きがこちらのフリップになります。

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今泉:
 この緑で囲われている部分が2005年になります。赤いグラフがドル円を示しています。

飯田:
 105円から120円台に向かって上昇していますね~!

今泉:
 そうです。一方青いグラフで示されているドルユーロはドルが買われるという相場で、ユーロもドル買いが進んだことが分かると思います。これは2005年だけの時限立法でしたが、トランプさんが勝利した場合、2018年に行うのか、それ以前に行うのか、時限立法なのか、いろいろ条件によって変わってくるとは思いますが、国内への投資を促すという点ではアメリカにとってはすごくいい話だと思います。

飯田:
 トランプさんのようなポピュリスト型の政権としては、多国籍企業が稼いだ金をアメリカ以外で保持している=けしからん! というのはウケが良さそうですよね。それだけに、トランプさんが当選した場合、この政策に関しては実現する可能性が高い。なにより先例もある。トランプさんの政策の中では数少ない先例のある政策のような気がします(笑)。

今泉:
 トランプさんが当選すればリスクオフという相場になって100円割れということも当然ありえます。ましてや95円なんて望んでいないという人もいると思うのですが、裏を返せば、そこが絶好の買い場だと思っている方もいるでしょう。そういう方々にとっては、2018年にそこまで上がってくるのだとしたら、「いい買い場をくれてありがとう」ということになりますよね。投資家の中には、トランプさんの方がいいという人もいるわけです(笑)。

飯田:
 なるほど~(笑)。たしかにトランプさんはリスクばかりが強調される。実際に大統領になったときに有言実行できるか不透明感はあるものの、その中でもとりわけ本国投資法は比較的実現する可能性があるため注目しておく必要がありそうですね。

今泉:
 そう思いますね。

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大統領選当日はマーケットの何に注視しておくべきか

飯田:
 来週の大統領選では、途中経過が刻々と発表されていくわけですが、ここで一つユーザーからの質問をご紹介しましょうか。

ユーザー質問(20代男性):
 FX投資をしています。Brexitのときに往復ビンタ(買いと売りの両方で損失を出すこと)を食らってしまいました。それを避けるためにも、9日の開票時にどのような為替変動の可能性があるのかお教えいただけないでしょうか?

飯田:
 となると、やはりここは時系列的に「何時に何に注目するか」という情報が必要かと思います。

今泉:
 一番最初に締め切られる投票所が日本時間の9日午前9時です。

飯田:
 各州バラつきがあるだろうけど、午前9時30分くらいには投票結果が出始めてくるという感じでしょうね。

今泉:
 とは言え、接戦州ではないところは出口調査に信憑性があるでしょうが、接戦州はそもそも出口調査を発表できるのか? ということが考えられます。放送局Aが僅差でヒラリーさん勝利を伝えた直後、放送局Bが僅差でトランプさんが勝ったと伝えると収拾がつかなくなりますよね(苦笑)。

飯田:
 まさにBrexitのときに各放送局がいろいろなことを言っていましたね(笑)。その結果、先ほどの質問にあったように往復ビンタを、しかも何回も食らってしまった人も少なくなかったと思います(苦笑)。そこで各州の投票締め切り時間について解説していきましょう。

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今泉:
 時間は、各州の最も遅く閉まる投票所の時間に合わせています。

飯田:
 赤色になっているのは、レッドステート、すなわち共和党が勝つだろうと言われている州、青色がブルーステート、伝統的に民主党が強いと言われている州ですね。そして紫色になっているのはスウィングステート、どちらに転ぶか分からない激戦州と呼ばれている州ですね。世論調査などでは伯仲していると言われていますが、重要なのはどの州で過半数を取るかということですよね。

今泉:
 ですね。そこで重要と言われている州を太字にしています。

ノースカロライナ、オハイオ、フロリダ、ミシガンに注目せよ

飯田:
 まずは9:30に締め切られるノースカロライナ州(15)とオハイオ州(18)。

今泉:
 FBIの再調査の報道が出て以降、世論調査では両州ともに現在はトランプさんがリードしています。トランプさんが勝つためには大きな州を抑えることが絶対条件なので、この両州を抑えることは必須です。

飯田:
 世論調査ではトランプさんになってはいるものの、この二つの州はいまだ接戦という状況ですよね。

今泉:
 接戦すぎて出口調査の結果が出せない可能性があるほどです。

飯田:
 いわゆる日本の選挙で言うところの「当確」みたいなものが出てこない可能性がある、と。

今泉:
 そういったことは多分ないでしょうね。しかも2000年のフロリダの件(ブッシュvsゴアのフロリダ州における再集計)もあるので、かなり慎重に時間をかけた集計になるでしょうから、発表時間がずれ込む可能性もある。当然、フロリダ州(29)も慎重な集計が行われるでしょう。ちなみにフロリダでもトランプさんがリードしているという世論調査が出ている。

飯田:
 選挙結果そのものにお金をかける選挙予想市場では、圧倒的に9割方ヒラリーが勝つという予想になっていたのが、現在は7:3くらいまでトランプさんが戻している状況になっている。それを後押ししているのが、ノースカロライナ州、オハイオ州、フロリダ州のトランプ優勢報道という感じですかね。

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今泉:
 そうでしょうね。そんなに大きな票田ではないので気にしていなかったのですが、ここにきてネバダ州もトランプさんが逆転してリードしている報道が出ました。また、ニューハンプシャー州でもトランプ優勢が報道されている。選挙人の数は少ないながらもそういったスウィングステートを、塵も積もれば山となる的に獲得していけば、10時締め切りの州の結果が出始めたくらいから「トランプさんの方が優勢なんじゃない!?」という見方に傾く可能性がある。となると、結果はどうであれ、その時点からマーケットは相当激しく円高方向に触れていくことが考えらえる。

飯田:
 一方で、ヒラリーさんはカリフォルニア州(55)、ニューヨーク州(29)など大きなブルーステートをがっちり抑えているので、トランプさんが勝つためには、かなりの比率でスウィングステートを勝たなければならないわけですよね。

今泉:
 そうなるでしょうね。太字にしてあるスウィングステートのうち一つでも落とせば、その時点でトランプさんの勝利はなくなると見ていいでしょう。裏を返せば、その一つでもヒラリーさんが取ればマーケットは安定すると思われます。

細かい優勢報道に踊らされずに大局を見極めるように

飯田:
 一番怖いのは、中小の州でトランプ勝利の知らせが出るたびに、めちゃくちゃな円高相場に触れていくかもしれないということ。

今泉:
 トランプ優勢の報に振れて97円まで落ちて、大票田をヒラリーが取った途端に100円に戻り、105円まで上がるなんてこともあるかもしれませんね(笑)。

飯田:
 恐ろしい相場ですね~(苦笑)。

今泉:
 私がキーと見ているのがスウィングステートのミシガン州(16)。現時点ではヒラリーさんがリードしています。ミシガン州には自動車産業で有名なデトロイトがあるのですが、その工場を割安なメキシコなどに移したこともあって失業者が増えています。

飯田:
 典型的なゴーストタウンになりつつありますよね。

今泉:
 かつてロボコップのモデルになった街がデトロイトだった。現時点ではヒラリーさんが優勢ですから、先に挙げたノースカロライナ州、オハイオ州、フロリダ州の集計結果がずれ込み、先にミシガン州の結果として「ヒラリー勝利」と発表されれば勝負ありと見ていいでしょう。

飯田:
 なるほど。となると、だいたい11時台、お昼くらいには一つの指標が示されるということですね。

今泉:
 先に締め切るノースカロライナ州、オハイオ州、フロリダ州の出口調査が先述したように激戦ゆえに発表ができない状況の中で、先にミシガン州の正式な集計結果が出ることもありえるでしょう。やはりお昼くらいが一つの目安になるでしょうね。
時間と開票結果を見ながら相場が右往左往するでしょうが、私自身は最終的にはミシガンが決め手になってヒラリーさんが勝つと思っています。下がったところは良い買い場になるのではないかと予想しています。

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飯田:
 なるほど~。週明けからちょっとしたニュースで相場が動くでしょうね。

今泉:
 土日(※この放送は4日金曜に収録)にヒラリーさんが倒れたとか、ウィキリークスの暴露があったりすると、ウェリントンタイム、シドニータイムからマーケットは動き出すため早朝から揺れ動くことになります。しかもマーケットがかなり薄い状況で動き出す中で、いきなり円高に振れるようなことがあれば下値のメドが読めないという恐れが出てくる。そのため週末のニュースをじっくり見て、身も心もリフレッシュした上で、月曜からの相場に臨んでほしいですね。

飯田:
 この土日にポジションを持ち越すのか、それともポジションを一旦回収して週末はのんびり過ごすのか、多くのトレーダーが思っているでしょうね(笑)。飛ぶとしたらかなり大きな値飛びになる可能性が考えられますかね?

嵐の前の静けさの中でどうポジションを置くか?

今泉:
 ドルの上値、つまり円安方向には堅実かつ着実な輸出企業さんのドルの戻り売りが並ぶと思われます。一方でドルの下値ですが、どこまで落ちていくか読めないので、まずは買いを控えるということでしょうね。ですから、相場にとってトランプさんが有利になるような情報が出た際は、円高方向にとっては非常にリスクがあるのではないかと。

飯田:
 円高方向に振れたときには、それを防ぐような材料が今のところないですよね。日銀の政策決定会合があるわけでもないし、急に大きな財政出動が出るわけでもない。ストッパーがない状況なので、短期的に振れやすい傾向になるということでしょうか。

今泉:
 私自身は最終的にヒラリーさんが勝つと予想しているので、押し目買いをするのが健全ではないかと思っていますね。

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飯田:
 それにしてもここから1週間はどう動くのかまったく分からないですから、自己責任、そして長期投資の方にとってはスルーすべきかもしれないですね(笑)。コメントでも「もうとっくにノーポジだ」なんて意見も散見しているほどですし、先のドル円のチャートを見ても、雇用統計の結果が妥当とは言え、ほとんど動きがありませんでしたら、やはり迫りくる大統領選という超巨大マーケットを前にした嵐の前の静けさ、といったところでしょうね。

今泉:
 今回の雇用統計はよほど予想に反した数字が出れば材料になったのかもしれませんが、来週の大統領選の結果を見ないと長期投資はできない、という方もいるでしょうね。コンピューターによるシステム売買なら話は別ですが、大統領選ではそれすらも止まってしまうかもしれないですよ。

飯田:
 なるほど。ということで、本日は経済政策という視点に注目して、アメリカ大統領選の話をしていきました。引き続き、ニコ生ではアメリカ大統領選を追っていきますのでよろしくお願い致します。

米大統領選当日の市場の動きはぜひこちらでご覧ください

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