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「いつまでニコニコに投稿するの?」と言われることも――これからの時代、クリエイターはプラットフォームをどう選ぶべきなのか【歌い手 そらる×ニコニコ代表 対談】

 YouTube、niconico、ツイキャス、OPENREC.tv、pixiv、など様々なプラットフォーム上で活動する「ネットクリエイター」たち。

 多大な再生数、収益、フォロワー数など華やかな成功を収めるトップクリエイターがいる一方、新規に投稿を始めたが思うように再生数が取れない、ファンやフォロワーを獲得できない、コンテンツの評判がよくない、収益につながらないといった悩みを持つクリエイターも少なくない。

 クリエイターはどうプラットフォームを利用し、プラットフォーム側はクリエイターとどう向き合うべきか? 

 ニコニコ動画での初投稿から12年、常に“歌い手”としてネットクリエイターの最前線に立ち続け、様々なプラットフォームで活動を行うそらる氏@soraruru)と2017年よりniconico運営代表を務める株式会社ドワンゴの栗田穣崇@sigekun)というクリエイターとプラットフォーム運営者それぞれの立場から語る対談が実現した。

 クリエイターが活動をしていく上で重要となるプラットフォームの選び方やプラットフォーム運営者に期待していること、プラットフォーム運営の実情についてなどが次々に語られる中、そらる氏からはクリエイターデビューの場であり、現在も投稿を続けるniconicoについての本音も飛び出した。

歌ってみた動画投稿者
そらる@soraruru
2008年ニコニコ動画にて“歌ってみた”動画を初投稿。以降niconico、YouTube、OPENREC.tvなど様々なプラットフォームでコンテンツ配信を続けるクリエイター。コンテンツ制作においては歌、作詞作曲からエンジニアリングまでマルチに活動し、幕張メッセを始めとするアリーナクラスのライブも次々に実現。動画の総再生数3億回、Twitterフォロワー144万人、YouTubeチャンネル登録96万人を持つトップクリエイター。
そらるさん投稿動画一覧ページ
 
niconico運営代表
栗田穣崇@sigekun
株式会社ドワンゴ専務取締役、niconico運営代表(2017~)。niconicoのサービス改善、新規サービス開発をユーザー、クリエイターの意見を重視しながら進め、カスタムキャストなどniconico以外のサービス立ち上げも主導。
自身もネットゲーム実況をニコニコ生放送で配信する“生主”である。
栗田穣崇さん投稿動画一覧ページ

■クリエイターデビューの場所、niconicoについて

司会:
 そらるさんは2008年にニコニコ動画に初投稿、「歌ってみた」カテゴリを中心に累計で350本以上の動画を投稿されています。そらるさんにとってniconicoはどのような場所でしょうか?

そらる:
 ニコニコ動画は、やはり一番最初に動画投稿をはじめた場所、今聞いてくださるファンの方が自分を知ってくれるキッカケになった場所という思いがあります。それが今でも動画投稿を続けている理由の一つでもあります。

栗田穣崇(以下、栗田):
 長くご利用いただき本当に心より感謝しています。ありがとうございます。

司会:
 そらるさんの現在のniconicoの主な使い方、印象などはどうでしょうか?

そらる:
 音楽系の動画を中心にniconicoを使っているんですが、コメントシステムの優秀さ、同じ楽曲カテゴリ内でもソートがしやすく、検索もしやすいところはいいなと思っている点です。

そらるさんの歌ってみた動画に流れるコメント。動画プレーヤーの上部にはタグが表示され、ユーザーが興味のあるタグから別の動画へ移動できる。
(画像は「ボッカデラベリタ  歌ってみた【そらる】」より)

司会:
 YouTubeとよく比較される点として、他のユーザーさんの意見でもタグ検索などによる検索がしやすいというものやジャンル別ランキングなどがある点などが挙げられていますね。

そらる:
 ええ。ただ、去年新しいランキング表示になりましたけど、昔は月毎や週毎のランキングが見れたりしていたんですが、それが少し難しい操作をしないと見れなくなってしまったことについては、個人的に少し残念だなと思いました。

栗田:
 なるほど。やはりランキングはかなり細かくチェックされているんですね。

そらる:
 niconicoで活動するクリエイターにとってランキング順位やマイリスト数、コメント数は投稿のモチベーションに深く関わる部分ですし、また視聴者としても自分の好きなジャンルのランキングは細かく見たいというのがありますね。

ランキングの集計期間は「毎時・24時間・週間・月間・全期間」から選ぶことができる。
(画像はニコニコ動画ジャンルランキング「音楽・サウンド」より)

栗田:
 1ヶ月ランキングだとランクインしなくても24時間ランキングや、あるいはカテゴリランキングならランクインできる、という人も多いですよね。特に新人クリエイターの人などは前日ランキング◯位、などに入ると嬉しいものだと思います。

そらる:
 自分はありがたいことに投稿すればある程度は見て頂け、ランキングにも入るという環境にありますが、新しく投稿されるクリエイターの方は、投稿してもランキングにも乗らない、再生数が伸びない、マイリストもされないというのはモチベーションへの影響が大きいと思いますね。

栗田:
 niconicoは今の体制としてクリエイターさん、視聴者さんの声も伺いつつ開発をするようにしていますが、やはりどこかを立てれば、どこかが立たないという部分も多々あり、多くの方が妥協できるポイントというのが今の着地点になっています。

 このランキングがベストなものかどうか、まだ試行錯誤の段階ですがそういった声が聞けるのはとてもありがたいことだと思っています。

そらる:
 去年のランキング改修はどういった狙いがあったのですか?

栗田:
 これまでのランキングは上位が変わらない、固定化してしまって新規の方に光が当たらないという問題を抱えていました。そのために大幅なリニューアルをし現在の形に落ち着いたのですが、以前よりも細かく設定できるようになった反面、慣れていない人は不便を感じる事があるのかもしれません。今後の課題ですね。

司会:
 いま栗田さんが考えているランキングの理想形というのはありますか?

栗田:
 niconicoの強さはコミュニティにあると思いますので、タグであったり、好きなモノが似ているクラスタが見つけやすい、集まりやすい機能、こういった部分は今後もさらに伸ばしていければと考えています。

■クリエイターは再生数が重要? YouTubeとniconicoの違い

司会:
 YouTubeについてはどのような印象や使い方をされていますか?

そらる:
 「YouTube」には再生数が伸びやすいという良さがあり、それに付随する形で収益化もしやすいというのが大きな利点です。やはりクリエイターが投稿する一番の目的は「見てほしい」というものなので、少しでも多くの方に見てもらえるところに投稿は集中するんだと思います。

司会:
 よく再生数についてはYouTubeとniconicoは比較されがちですが、栗田さんから見てYouTubeの「伸びやすさ」の強みはどこにあると思われますか?

栗田:
 再生数に関しまして、クリエイターの人気をピラミッド構造で考えた場合、上の方にいるクリエイターさんはYouTubeで物凄く再生される傾向にあると思います。Googleが運営するYouTubeは動画プラットフォームとして確立されていて、それを世界中に向け展開していますので、ネームバリューが高い人ほど、より多くの人に見られるプラットフォームになっています。

そらる:
 上の方にいるクリエイターさんは、ということですが、例えば投稿初心者の人はそうじゃなかったりするんですか?

栗田:
 再生数は意外と、新規のクリエイターや特定カテゴリについてはniconicoの方が最初に伸びやすいという事例が多いんです。例えばniconicoの強みとして、先程のクリエイターピラミッド構造で言いますと、真ん中くらいの人にメリットが有ると言えます。クラスタによってはYouTubeより伸びたりもします。

司会:
 それはなぜでしょう?

栗田:
 YouTubeでは、例えばボカロの新曲を探そうとしてもレコメンド【※】が優先されるので過去の人気曲であったり、コスプレや3Dモデルなどの動画も含めて人気、話題性の高いものが優先的に出てきます。なので新人ボカロPが初投稿をしてもなかなか気付かれない事も多いと感じています。

※レコメンド
ユーザーの視聴履歴を独自のアルゴリズムで解析し、おすすめの動画を表示するシステム。

 niconicoの場合は「初音ミクオリジナル曲」などのようなタグ検索機能で楽曲に絞り込んだり、新着順、再生数が多い順など様々な表示メニューが分かりやすい位置にあるといったUIの違いや、そもそも視聴者が熱心に自分が好きなジャンルの新人の投稿者を探そうといった文化土壌があります。
 といった点から、YouTubeで配信しても全然気付いてもらえないですとか、再生数も回らないというユーザーが、niconicoに来て一気に伸びるという現象は、ここ数年でかなり大きなものになっています。

そらる:
 なるほど。しかし「人気が出たらYouTubeの方が再生される」ということになってしまうと、やはり人気が出た人はみんなYouTubeに行ってしまうのでは? と思ってしまいます。

 まだ自分の周りにはniconicoに投稿を続けている人が多いですが、YouTubeだけになってしまった人もやっぱりいます。そんな方からは「いつまでniconicoに投稿するの?」なんて言葉をかけられたりもしますが、それでもniconicoとしては大丈夫なのでしょうか?

栗田:
 そうですね。人気が出てYouTubeに移られる。それでも「niconicoで大きくなった」というものは残るかと思いますし、クリエイターさんもniconicoにいるユーザーに対して、「たまにはコミュニケーションを取ってみようかな」という気持ちが残るんじゃないか、残って欲しいなと思っています。音楽でいうとメジャーとインディーズ、マンガでいうと商業誌と同人誌の違いのようなものだと思います。

そらる:
 例えばオリジナル楽曲のMVを上げるときにも、自分が出演しているような実写のMVですと、niconicoに合っていないような感じがしてしまうんです。実際にほとんどいないんですよ。自分が出演するMVを上げている人が。
 なので、実写のミュージックビデオとは別にイラストのniconico用アニメーションMVを作成し、そちらをあげるようにしていたりします。ボカロ曲の歌ってみた動画などはもちろん、原曲のMVの世界観をそのまま二次創作として制作しています 。

栗田:
 niconicoはコメントなどでコミュニケーションする場ですので、実写のPV映像だと情報量が多くて集中して見てしまうこともあるのか、例えばボカロ曲のようにイラストが中心となっているような余白が大きい動画ほうがコメントの伸びが良いというのは、まさにniconicoの特性そのものと言えます。
 そらるさんが今でもniconicoに投稿されている理由としてはそのあたりの文化特性もあってのことですか?

そらる:
 niconicoに今も動画投稿を続けている理由として一番大きいのは、「niconicoにも投稿してほしい」という熱量を持ったユーザーさんがいるということです。個人的にも、もちろんniconicoの文化が好きだということもあります。実況動画が好きでよく見るのですが、ああいう形の動画は特にコメントがあると数段面白く見ることができるので、niconicoで見ることが多いです。

 ただ……めちゃくちゃリアルな話をすると、YouTubeに比べると再生数の伸びにくさは否めませんし、それが理由で「投稿をやめちゃった」という話も周囲で凄くよく聞く話なので、この状況が続いてしまうと去っていってしまう方も多くなっていくのではないかと思います。

栗田:
 niconicoで成功してYouTubeに行く、YouTubeでも成功するという流れは良いと思うんです。ただ、コメントによる楽しさや一体感といったniconicoならではの良さをもっとたくさんの方に知っていただいて、クリエイターの方々にも使い分けていただく、ということを、どれだけできるかだと思います。

そらる:
 せっかくの機会なので聞いてみたいんですが、昔のniconicoってカテゴリを超えた祭りや工作など色々なシーンがあって、投稿して数時間で10万再生を超えたり、そういうのも楽しみの一つでした。最近ではこのような盛り上がり方ですとか、バズり方が減ったような気がしていますが、実際のところはどうですか?

栗田:
 そらるさんの動画でも同じような事が起きていますか?

そらる:
 例えば「動画を投稿しました」とTwitterでツイートした時です。いいね数は何万件とあっても、マイリストは数千件ほどしか伸びないという。そのせいか昔よりも話題性に対して伸びている動画が減っている印象はあります。

栗田:
 おっしゃるとおりniconicoの使われ方が変わってきているという実感はあります。Twitterで拡散されて、そこからniconicoに来てくれている人は多くても、コメントやマイリストをするというアクションまで起こしてくれる人の割合は多くはありません。

そらる:
 まだまだniconicoに対してはアカウントのハードルが高いイメージあるのかなと思います。
 昔からniconicoを使っている方はわかっていると思うのですが、今も「アカウントがないと見れない」と思っている方も多く、「マイリストのやり方がわからない」という方もいるようです。投稿者のモチベーションに繋がりやすい部分なので、このあたりがもっと直感的になったりすればありがたいなと思います。

栗田:
 実際は数年前からアカウントがなくても動画の再生はできるようになっている【※】のですが、この点はしっかりブランディングのやり直し、リブランディングしていく必要がありますね。

※2018年2月28日(水)より、ニコニコ動画は会員登録やログインなしでも視聴できるようになり、ニコニコ生放送も2018年9月25日(火)より会員登録やログインなしで視聴可能となった。
(画像はニコニコインフォ「ニコニコ動画がログイン不要で視聴可能になりました」より)

 niconicoはインディーズで良い、とさっき言いましたが、だからといって「再生数が低くても良い」とは思っていません。
クリエイターの皆さんの動画がより多く再生やコメントをされたり、あるいはコンテンツ制作のサポートとなるような機能、サービスはもちろん強化していくつもりです。

そらる:
 なるほど。ちなみに最近の新規の投稿者数はどうなのでしょうか?

栗田:
 最近の動画投稿数に関しては最も投稿者数の多かった4年前の数字まで戻っているという部分もあります。
 むしろコロナウイルスによる自粛期間の影響もあってか、3月以降で新規の投稿者さん、あるいはしばらく投稿していなかった投稿経験者さんがどんどん増えてきている状況です 。

司会:
 そのような状況の中でそらるさんの体感であったり、あるいはネット上で「どんどん人が減っている」と感じられる発言が多いのはどういう理由があるとお考えでしょうか?

栗田:
 実際にはYouTubeで投稿を始めたり、あるいはもともとYouTubeで投稿していた人がniconicoにも同時に投稿するような状態なんです。

 他のプラットフォームでクリエイターが投稿をすると「去られた」とか、戻ってくると「なんで戻ってきた」と言われたりしがちなんですがYouTubeとniconicoそれぞれの強み、ついているお客さんも違うので、クリエイターさんはどちらで配信していただいても構わないんです。テレビ局が複数あるのと同じように、展開や作風、活動によって使い分けをしたり、使い方の一つとして考えて頂けるとありがたいです。

そらる:
 YouTubeで投稿を始める人はやはり、再生数が伸びやすいとか収益化しやすいというところに惹かれる面が大きいと思いますので、それに加えてniconicoにも再生数の伸びやすさとか、クリエイターのモチベーションアップのためにマイリスト登録やコメントがされやすいような強化をぜひ、お願いしたいです。

司会:
 そらるさんからの希望にあったような内容で、実際にniconicoとして着手されていることはあるのでしょうか?

栗田:
 いまniconicoとして考えているポイントは3つあります。

 1つ目はYouTubeに再生数で敵わなくても、コメントに熱量があり、その熱量が伝わりやすいコメントシステムがあるという点のさらなる強化です。
 2つ目は投稿のしやすさに向けた、UIの改善であったり、システムの改善でどこまで機能を今より良くしていけるか。
 3つ目はYouTubeで伸び悩みを抱えているクラスタに対する、再生数の安定、コメントの盛り上がり、そして収益が出せるということを実際に体験して頂き、共有を広げていくという展開です。

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