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戦争の歴史が凝縮された銃「AK47 & M16」――その発明者が送った数奇なる人生とは

 ニコニコドキュメンタリーでは、『ザ・ライバル』と題して、世界が注目する“ライバル関係”を描いた12作品を、ニコニコ生放送にてお届けします。

 本稿では、そんな『ザ・ライバル』シリーズの内容を、プロデューサーを務める吉川圭三が6月14日に放送される『カラシニコフ VS M16 ~最強の武器を求めて~』を解説。
 「世界まる見え!テレビ特捜部」や「恋のから騒ぎ」など、数々の人気テレビ番組を手がけてきた吉川氏が語る、対決の見所とは……!?


世界に大きな影響を与えた2つの銃

 この「ザ・ライバル」シリーズを12本配信する中で、おそらくこの作品は1、2を争う傑作だと私は思う。戦争・人間・革命・国家・歴史の全てがこの1本に凝縮されているかの様などっしりとした重みがあると思う。

 また名銃、ソ連のミハエル・カラシニコフが生み出した「AK47」もアメリカのユージン・ストーナーが生み出した「M16」。このドキュメンタリーを見ているとただの銃器であるのみならず、ある種の「人格」を持っているかの様に思える。この二つの銃は近代の歴史をも左右するほどの影響を世界に与えたのである。

 ベトナム戦争・チリ内戦・アフガン戦争・共産ゲリラ紛争・あらゆる革命闘争・米国のイラク侵攻・アフリカ内戦・ビンラディン・パリ同時テロ……。

『ザ・ライバル』カラシニコフ VS M16 ~最強の武器を求めて~より

 AK47は組み立て・手入れが簡単、泥・砂・水にも強いシベリアの熊の様な頑強で、乱暴に扱われても壊れない自動小銃で、安価に大量生産が可能。
 M16は航空宇宙業界出身のスト―ナーが、プラスチックとアルミ合金とカーボンファイバーで設計したわずか3.12キロの高性能だが、繊細な貴婦人の様な自動小銃でしかも高額である。
 ご存じの様に漫画家のさいとう・たかをが『ゴルゴ13』に持たせた銃が「画になるカッコイイ銃」M16である。

2つの銃の対決の歴史

 この二つの武器が本格的に対決したのはアメリカが初めて負けた戦争「ベトナム戦争」だった。
 AK47はソ連から技術供与を受けた中国が大量生産し、共産圏側のホー・チ・ミン率いる北ベトナム軍に大量に投入された。泥と湿気に満ちた熱帯のジャングルでベトコン(南ベトナム民族解放戦線)がどんなに酷使してもビクともしなかった。
 一方、M16を持ちこんだアメリカ軍の前線兵士達は手入れを少し怠っただけで使用が出来なくなるこの武器に手を焼いていた。
 また、信じられない事に軍と兵器産業の利権がらみで間違った銃弾が大量に支給されていた時もあったと言う。銃がほとんど役に立たない戦闘でベトコンの持つAK47はまるで蟻を潰すかのようにアメリカ兵に打撃を与えた。兵士達はM16の弱点を本国に手紙で送り、それは米国議会でも問題にされた。この武器の違いがアメリカがベトナムで敗北した理由の一つにあげる専門家もいる程だ。

『ザ・ライバル』カラシニコフ VS M16 ~最強の武器を求めて~より

 さらに、あのアレキサンダー大王も制覇できなかったと言うアフガニスタンでの紛争に、ソビエト連邦は10年間もの間手を焼いた末、1991年12月ソ連は崩壊した。ソ連崩壊に導いた泥沼アフガン紛争の敗因は、アメリカCIAがアフガン抵抗勢力側に与えた大量の安くてタフなAK47であったというから皮肉なモノである。

 旧ソ連から流出した多くのAK47は武器商人や旧軍人を通じてアフリカ・中東・ヨーロッパへ流出する。また単純な構造故にコピーされ易いので中国などで大量生産された。これが後に、アフリカ内戦、中東諸国の紛争、ヨーロッパにおけるテロリズムに使用される。「子供にも扱える銃AK47」はアフリカで沢山の少年・少女兵を生んだ。

 AK47を生んだカラシニコフは青年時代にドイツとソ連の戦争で負傷を負い、病院の図書館で銃器関係の本を読みあさり、自動小銃の必要性を上官に説き自ら設計した。軍曹から技術中将になったが、収入はそれほどでは無かったと言う。
 一方、M16を生んだストーナーはM16の特許権で大富豪になった。
 AK47は世界で実に1億丁、M16は1000万丁が製造された。ハリウッド映画の影響でテロリストが多用する設定のカラシニコフ銃は、敵対する相手に見せるだけで逃げてしまう様な「悪魔の銃」として映像イメージ化された。

 2013年亡くなったカラシニコフの葬儀にはプーチン大統領も花を手向けた。しかし、カラシニコフ自身は「歴史上最も多くの人を殺傷した武器」を開発した張本人として晩年、ロシア正教会に救いを求めていたと言う。毎年、この銃によって世界で25万人程が死んでいると知ったからだろうか。

『ザ・ライバル』カラシニコフ VS M16 ~最強の武器を求めて~より

 そして、この作品では「最強銃器」カラシニコフのAK47も、ストーナーのM16もその開発動機・理由は全く同じだと言う。それは「祖国を守るためにはこんな強力な銃が必要だ。」ということ。つまり、祖国を守るための“愛国心”だったのである。
 綺麗ごとに聞こえる“愛国心”が世界で最も恐ろしい武器を生んでしまったのだ。「この国を守るために」……最近どこかでよく聞く言葉である。この作品は、この言葉の恐ろしさを米ソを代表する武器の誕生と、その変遷から教えてくれるのである。

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プロフィール
ドワンゴ・エグゼクティブ・プロデューサー。ニコニコドキュメンタリーのプロデュースを務める。「世界まる見えテレビ特捜部」や「恋のから騒ぎ」など、数々の人気テレビ番組を手がけてきた。著書に『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』(小学館)、『ヒット番組に必要なことはすべて映画に学んだ』(文藝春秋)など。

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