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ボカロP・ゲームクリエイター・小説家etc…ネットで活躍するクリエイターの“著作権使用料の回収方法”について専門家が解説

 4月29、30日の2日間に渡って、幕張メッセで開催された『ニコニコ超会議2017』。超会議では日本ネットクリエイター協会理事・仁平淳宏さんを中心とした講演会『【JNCA】クリエイター活動報告&権利お勉強ライブ』が開かれ、当日の様子が生放送されました。

 今やその人気は国境を超えるまでに成長したコンテンツ、「VOCALOID(ボーカロイド)」。なかでも個性的な楽曲を創作する“ボカロP”と呼ばれるクリエイターの人気は現在も大きな盛り上がりを見せています。世界進出して行くボカロ曲、その著作権対策についてボカロP・かにみそPさん、著作権管理会社NexToneの伊藤圭介さんをゲストスピーカーにお迎えしNexToneの事業内容から著作権の管理まで、詳しく解説して頂きました。


自作曲を公開する時、どういった対策が必要?

左から仁平淳宏さん、伊藤圭介さん、かにみそPさん。

仁平:
 JNCAの講演会も最後になりました。最後にお話して頂くテーマは、YouTubeの『コンテンツID』を使って楽曲を展開したり、自分の楽曲を海外で展開する方法であるとか、どういった事を考えなければいけないだろうか、というお話をして頂きたいと思います。今日お話頂きますのは、株式会社NexToneシステムズ取締役の伊藤圭介さんです。宜しくお願いします。

伊藤:
 宜しくお願いします。

仁平:
 そしてゲストにかにみそPさんです。

かにみそP:
 宜しくお願いします。

仁平:
 実はYouTubeの『コンテンツID』に関しては、去年の超会議でも伊藤さんにお話して頂いて、クリエイターの方から、とっても反響が大きかったんです。

 それで今年も是非、やって頂こうかなという事を考えておりまして、お話をさせて頂いたら、快く引き受けて頂いたという経緯です。しかも実はかにみそさんが2月位から、『コンテンツID』に楽曲を登録して頂いてくれたんですよね?

かにみそP:
 はい。

仁平:
 なので、そういった意味で、ますますかにみそさんにとってもリアルタイムなお話だと思いますので、本日そのあたりのお話を伊藤さんから詳しく教えて頂ければと思います。

伊藤:
 『同人活動を行っている方が、知っておくと得するかも知れない権利に関する話』という事で、基本はコンテンツIDの件を、という事だったんですが、そこに絡んで行く所で、今回は先に『フィンガープリントについて』のお話、その後に『YouTubeコンテンツIDについて』、後は『海外地域管理について』どうやって流れているのかという事について、お話をさせて頂きたいと思います。

フィンガープリントって?

仁平:
 では、最初に、『フィンガープリントについて』ですね。

伊藤:
 まず『フィンガープリント』って、かにみそさんなんだと思いますか?

かにみそP:
 え? 指?

伊藤:
 ですね、直訳すると指紋です。

かにみそP:
 なるほど。指紋ですか。

伊藤:
 指紋による人物の特定と同様に、音楽や映像から抽出した特徴データ、これを『フィンガープリント』と言っていますが、フィンガープリント同士を高速に照合する事で、音や映像を特定する技術です。音楽や映像の利用を特定する為に国内外で広く活用されています。これでも、あんまり良く分からないですよね?

かにみそP:
 はい。ちょっと難しいですね。

伊藤:
 よく刑事ドラマとかで、指紋を採取しているシーンがありますよね。白い粉を掛けて、パタパタと、あそこで出てくる採取した指紋というのは、それだけでは使えないですよね。あれを警察の指紋のデータベースと照合して、初めて人物を特定するという物になりますが、この音楽とか映像のフィンガープリント技術に関しても、同じ考え方です。

 音楽・映像のマスターデータをまずフィンガープリント化します。この『フィンガープリント』というのは、特徴データ、音楽であれば、部分的に特徴のある点を、作った非常にデータ容量の低いデータになります。通常の音楽のWAVデータとかですと、大体5分で50MBくらい容量がありますが、これをフィンガープリントデータにしますと、数KBのデータ容量になりますので、WAVデータの数千分の1の容量になるので、照合が高速で出来るようになる、という技術です。

 なんで、このフィンガープリントが必要になってきたかと言うと、特に、大量に映像を利用する利用者においては、映像の中でどの音楽が使われているか? という事を正しく把握する事が難しいケースがあります。

伊藤:
 (上図の左方に)権利者が原盤の『音源X』という物を持っています。右側に利用者のTV局、下に動画配信サイトというのがあります。TV局では『番組A』の中で『原盤X』を使っています。『番組B』の中では『原盤X』を使っていません。

 次に、(動画投稿サイトの)『動画C』の中では『原盤X』を使っていますが、『動画D』の中では使われていないという状況があった時に、この中で『原盤X』を使っている番組は、利用者が利用報告をしなければいけないんですが、一昔前まではこれが特定出来ないという状況がありました。

伊藤:
 JASRACさんの話でも、利用報告の問題が触れられていたと思います。昔はここの特定をする方法が無かったという所で、放送や動画投稿サイトにおいて、どの楽曲が利用されたかの特定が難しいという状況がありました。

 しかし、このフィンガープリント技術の登場によって、楽曲の特定精度が一気に向上しました。次にフィンガープリントの運用イメージ、『FP』というのが『フィンガープリント』の略になりますが、下で説明します。

伊藤:
 まず、同じく左側に『原盤X』を持っている権利者の方がいらっしゃいます。これをフィンガープリントシステムにフィンガープリント化してデータを入れます。次に、TV局、動画投稿サイト、それぞれがフィンガープリント化をして、このフィンガープリントシステムの方に、データを入れます。そうすると、双方の『フィンガープリント』を自動的に照合し、マッチングするという事が出来るようになります。

 それで初めて、映像で利用された音源と、『原盤X』がマッチするという事で、特定が行われます。先程はマッチングが報告出来ないと言っていた所が、きちんと番組Aの中に『原盤X』が含まれている。『動画C』の中に『原盤X』が含まれているという事が確定します。これによって、著作権の利用においても、正しい利用実績報告が実現するという形になります。ここまでいかがでしょうか?

かにみそP:
 これって、どの程度まで正確にマッチ出来るんですか? 同じ原盤を使われた物でないと、マッチ出来ないという感じですか?

伊藤:
 チューニングと、このフィンガープリント運営事業者のシステムの状況によっても異なりますが、中では、最近は生歌でもメロディーを追っていって特定する、という様な物もあります。

かにみそP:
 じゃ、『歌ってみた』のボカロの曲を使われても特定が出来るんですか?

伊藤:
 基本的に、原盤や音源ベースにはなりますので、まずは音源を入れて置かないと、(マッチングに)当たらない、または当たりにくいという事にはなります。

仁平:
 例えば、さっきかにみそさんにお借りしたCDですけど『ダンシング☆サムライ』。それ自体が、(別アレンジで)8曲も入っているんですよ。当然、8種類の『ダンシング☆サムライ』の原盤があるという事なんですけれど、要は、どのくらいの精度で、これが分かるかっていうのは、とても気になりますよね?

 それぞれの8種類の原盤があって、それぞれ権利者が違う訳ですよね。原盤の違いがあっても、マッチング出来るのか、って言うと?

伊藤: 
 はい、それは勿論(可能)。原盤各に、全てマッチングを掛けていくので。

仁平:
 それとさっき、私が気になったのは、動画配信サイトの場合のマッチングは、アップロードされた音楽データというのが、そもそもサーバーの中にあるので、マッチングしやすいかな? と思うんですけど、放送の場合にはどういう風にするんですか?

伊藤:
 それは放送した番組をそのまま全てデータ化して……。

仁平:
 フィンガープリント化して。成程、これはリアルタイムでやるんですか?

伊藤:
 そこは多分、使用している放送局によって、変わってくると思います。(『フィンガープリント』は)全てのTV局や投稿サイトが使っている物ではなくて、あくまで一部の放送局や動画投稿サイトが活用している、という状況です。『フィンガープリント』を活用していない利用者も、まだまだ居るという所ですので、全てが『フィンガープリント』でマッチング出来ている、っていう事ではないです。

 このように、動画の中でどのような音楽が利用されているのかを特定するのに、この『フィンガープリント』という技術が非常に有効となってきています。原盤や著作権の利用実績報告に活用されていて、報告精度の向上の為に欠かせない物となっています。

 繰り返しになりますが、当然、著作権の権利者に対する分配については、利用者の方々から正しい利用報告を頂かないと、我々はそれに基づいて分配していますので、正しい分配が出来ないという事があります。この様な新しい技術を活用しながら、正しい分配を行っていけるように、我々も協力をしていきたいと思っております。

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