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和歌山毒物カレー事件・林眞須美死刑囚はなぜ報道陣にホースで水を撒いたのか。マスコミの過剰報道で作られた死刑囚の人物像と冤罪の可能性

報道番組の在り方を考え直さないと、確実に第2、第3の冤罪が起こる

堀:
 事件報道に関してのメディア報道の劣化というのは間違いない。死刑が確定して、「この事件はあの容疑者なんじゃないの?」「 あの死刑囚じゃないの?」という空気を作る1つの発端として、メディアの発信は罪深い。本当に酷かったオウムの松本サリン事件を目の当たりにして、僕はメディアの内側に入る事で改善されたら良いと思っていましたが、その構図は全く変わらない。無罪の推定【※】が取っ払われて、報道が先行して行く。ここは変えないといけないんじゃないですか?

※無罪の推定
犯罪を行ったと疑われて捜査の対象となった人(被疑者)や刑事裁判を受ける人(被告人)について、「刑事裁判で有罪が確定するまでは『罪を犯していない人』として扱わなければならない」とする原則。

横溝:
 「最高裁の裁判官は何を気にするかと言うと、ワイドショーを一番気にするんだ」という事をジョーク半分で聞いた事が有ります。毒カレー事件も、犯人だと決めつけての報道がありました。何が真実かというよりも、見ている人が面白ければ、それで良いじゃないかと。メディアも数字が付いて、スポンサーからお金が入るから良いじゃないかと。こういう所に陥っている状況の中で、もう一度メディアの在り方、報道番組の在り方を考え直さないと、確実に第2、第3の冤罪が起こるでしょうね。

堀:
 林眞須美に関して言えば、報道陣にホースで水を撒くシーンが繰り返し繰り返し報道される事によって、人物像のイメージというのが固まっていく。安田さんは弁護士としてご本人と接する中で、どういう風にお考えでいらっしゃいますか。

安田:
 あまりにもマスコミがしつこくて、玄関先で取材して、家の中へ入ろうとする。それでもう、堪らずに水を掛けて玄関から追い払うんです。それをカメラが撮っている訳です。何度も何度も(このシーンの放送を)やるんですね。それによって、彼女が犯人だと決めつけられていく。

安田:
 これは彼女の家の白い壁なんですけれど。

堀:
 1998年に逮捕され、2000年に火災で家は焼失することになります。

安田:
 この家では、林さん夫婦と子供達が4人、合計で6人が住んでいたんですね。林さん夫婦は警察の中、子供達は施設に預けられることになります。家は無人状態になるものですから、誰もが見に来るんです。悪い奴をやっつける、という感じで、どんどん落書きをする。警察も警備をしないんですが、今でも私達(弁護人)が現場に行くと、警察が後を付けてくるんです。彼女を無罪の方向に動こうとする人間を警察は監視するけれども、有罪の方向で動く人には放置です。(逮捕から)1年半後に放火されて家は燃えてしまうんです。現在、この家は無く、広場になっています。

堀:
 世論を作る報道の多くが、警察の囲み会見、警察当局からのリーク情報を元にしています。たとえ現場で「私は違うと思います」という意見が有ったとしても、「それは警察は認めているの?」という(報道)デスクからの一言で、論調が固められてしまい、テレビや新聞を含む大手メディアで、こういう世論があっという間に作り上げられてしまう。これはどこかで変えなければいけないですね。

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