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JAXA大西宇宙飛行士「自分が人類の文明の発展に貢献できるような実験や研究に従事していることを誇りに思う」 リアルタイム交信イベント(VIPコール)書き起こし

10/26(水)21:40から国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の大西卓哉宇宙飛行士とのリアルタイム交信(VIPコール)が行われました。若田光一宇宙飛行士/ISSプロジェクトマネージャー松野博一文科大臣鶴保庸介宇宙政策担当大臣等と大西氏の交信の様子をお届けします。

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松野大臣等の質問に答える大西卓哉

若田:
 国際宇宙ステーションの大西さん。こちらは国立科学博物館です。松野文部科学大臣、鶴保宇宙制作担当大臣を始め、皆さんが回線がつながるのを心待ちにしていました。

大西:
 若田さんこんばんは。松野大臣、鶴保大臣、みなさま、初めまして。JAXAの大西卓哉です。本日は私の仲間であるケイト・ルビンス飛行士もこの会場に来てくれています。日ごろからJAXAの活動に対するご支援、ご理解ありがとうございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

若田:
 大西さん、ありがとうございます。松野科学文部大臣、きぼうにいる大西飛行士にメッセージお願いします。

松野:
 文部科学大臣の松野です。大西さん、ルビンスさん、ありがとうございます。宇宙空間にいる飛行士の方と交信をするのは初めてなものですからわくわくしております。4ヶ月間きぼうに滞在されて、この実験の意義についてどのようにお考えでしょうか。

大西:
 松野大臣、どうもありがとうございます。この4か月間ですね、非常に多くの実験や研究に従事してきました。中でもですね、第48次長期滞在では、地上の研究者の方々、それからエンジニアの方々、そして軌道上にいるクルー一丸となってですね、小動物の長期飼育に関する研究に携わってきたのが印象に残っています。そういった日本ならではの、独自の宇宙空間を生かした実験をたくさん行っていますので、そこがISSの意義かなと思っております。ありがとうございます。

若田:
 大西さん、ありがとうございます。松野大臣一言いただけますでしょうか?

松野:
 昨年の末、私たちは2024年までこのISS計画の延長を決定いたしました。科学技術の進展や宇宙開発だけではなく、多くの人々に夢と希望を与える素晴らしい計画だと思います。私たちも応援しています。今日は高校生や企業の方々から大西さんにいろいろ質問があるかと思います。ぜひ楽しみながらお答えいただければと思います。

大西:
 まずは政府として2024までのISS計画延長を決定してくださったこと、心よりお礼申し上げます。決定してくださった方にはですね、良かったではなくて、国民の皆さまにそれだけの、延長した分だけのしっかりとした成果をお返しできるようにがんばっていきたいと思います。どうもありがとうございます。

若田:
 大西さん、ありがとうございます。それでは、鶴保宇宙政策担当大臣お願いします。

鶴保:
 宇宙政策担当大臣の鶴保です。はじめまして。皆さんお元気でしょうか。先月は筑波にあるきぼうの運用管制室を視察させていただきましたので、いまこうして交信しているととても身近に感じています。質問になりますけども、中国が宇宙開発を協力に推し進め、先日も有人宇宙船を打ち上げられたということであります。

 国会でも法案の審議を始めまして、今日は衆議院の委員会を通りました。今後、宇宙政策について望むこと、予算を増やしてくれなんて話も結構でありますので、意見を聞かせてください。

大西:
 鶴保大臣、ありがとうございます。中国の宇宙船のニュースは私もISSから拝見しました。この広い宇宙空間に私たちが載っているISSの他にもう1つ宇宙船が軌道上を回っていて、それがまた別の活動をしているというのはとても不思議な感覚を覚えました。ぜひですね、そういったいろいろな国と力を合わせて、宇宙開発を世界中の国々で盛り上げていきたいなと強く感じたのを覚えています。

 それから、いろいろな形で民間の利用も含めて、宇宙の利用が広がっていくと思うんですけども、それに伴って関連する法案の整備は当然必要になるかなと思います。そのあたりは、ぜひ政府の皆様にご協力をお願いして、日本が新しい枠組みの中でも、積極的に今後リーダーシップを取っていけるように早めの早めの対策を取っていけるといいのかなと期待しております。

 また、予算に関してはですね、もちろん多くいただけるに越したことはないんですけれども、JAXAの使命としては、与えられた予算の中でしっかりとした成果を出してお返しすることだと思っていますので、そういった地道な作業を続けていくことで予算がそのうち増額されればと思っています。ありがとうございます。

若田:
 大西さんありがとうございます。今日は缶サット甲子園で優勝した法政第二高等学校、衛星設計コンテストで優勝した都立武蔵高校、「こうのとり6号機」に搭載される超小型衛星の開発や宇宙ゴミ除去技術に利用される部品開発を行った企業の皆様にも来てもらっています。それでは、大西飛行士に質問をお願いします。法政二高の石井さんお願いします。

石井:
 法政二高・物理部の石井です。私たちは災害に目を向けて、誰でもわかりやすく使いやすいということに重点を置いた避難支援専用缶サットを制作いたしました。宇宙での実験を通して、地上で問題となっている分野を解決できると感じたことはありましたか?

大西:
 石井さん、初めまして。ご質問どうもありがとうございます。石井さんたちの缶サットのアイデア、私も拝見しました。高校生の頃の私にはとても思いつかないような、すばらしい発想だったと思います。本当にすばらしかったです。

 私たちが国際宇宙ステーションで行っている実験や研究というのは、最終的には全て地上の人々の生活の向上に役立てるために行っているものです。特に生命科学系の実験では、健康長寿の実現に向けた貢献ができると考えていますので期待してください。どうもありがとうございます。

若田:
 石井さん、もう1問質問お願いします。

石井:
 七夕の7月7日から四か月間宇宙に滞在されていますが、滞在中に印象に残っている出来事はどんなことだったでしょうか。

大西:
 まず1点目はですね、私はソユーズという宇宙船に乗って国際宇宙ステーションにやってきたのですが、ソユーズの窓から初めて国際宇宙ステーションを見たとき、とても感動しました。こんなところにこんな大きな実験施設を作った人間の科学力に感銘を受けました。そこで、自分が人類の文明の発展に貢献できるような実験や研究に従事していることを誇りに思っています。

 そして、宇宙ステーションに到着してまもなく、地上ではリオデジャネイロオリンピックが始まりました。日本選手団が大活躍する様子を私もISSから応援させていただきました。同じ日本を代表するものとして、世界という舞台で戦う中で、私自身の強い励みになったのを覚えています。

若田:
 それでは、都立武蔵高校の篠宮さんお願いします。

篠宮:
 都立武蔵高校の篠宮です。ルビンスさんにお聞きします。私たちは、風や撥水性素材を利用した宇宙でシャワーを快適に使う方法を検討しました。この研究を通じて宇宙空間で水を使うことの難しさについて実感しました。

 ルビンスさんが国際宇宙ステーションで行った実験のうち、無重力空間という宇宙の特徴を生かした実験はどのようなものがありましたか。

ルビンス:
 私たちはISSきぼうのモジュールで重力実験をいたしました。物理学も使いましたし、中には液体や素材なども検討しました。それから、小さな金属を粉々にしたものを研究したことができました。また、人間あるいは生き物の細胞というものの研究も行いました。

若田:
 ありがとうございます。それでは、畑村さんお願いします。

畑村:
 中島田鉄工所の畑村と申します。東北大学と協力してフリーダムという超小型の人工衛星の開発をして、宇宙のごみ問題に取り組んでいます。宇宙ゴミの増加は世界的に重大な問題で、宇宙で生活されている大西さんが普段の生活や船外活動の際に不安を感じているのではないかと心配しています。大西さんは宇宙ゴミの脅威をどのようにお考えでしょうか。

 私たち中小企業でも、独自の技術でこの分野で世界に貢献できればと考えております。よろしければ、私たちにチャレンジしがいのある宿題等をいただけないでしょうか。

大西:
 畑村さん、ありがとうございます。ご指摘のとおりですね、宇宙ゴミの問題は世界的な問題となっています。この国際宇宙ステーションにもですね、いつ宇宙ゴミが接近するか分かりませんので、常時地上からレーダーで監視している状態です。そして、衝突確率が一定以上の値になったときには、国際宇宙ステーションのエンジンを噴射して軌道を上げてそれを回避するという処置も取るんですね。実際にこれまでに何度かそういう事態になったことがあります。

 現在のところでは、まだ私たち人間の技術で、その脅威をコントロールできているレベルかなと思いますけども、今後ますます衛星の打ち上げが活発になって、ロケットのステージなどの宇宙ゴミが増えてくると、その脅威はとても深刻なものになるのではないかと私は考えています。

 そういった世界的な問題に対して、日本が産学官連携して、次のこうのとり6号機のミッションで実証を行うというのは、同じ日本人として誇りに思っています。ぜひですね、世界に先駆けて新しい技術を日本らしいモノづくりで達成いただきたいと思っています。がんばってください。

若田:
 それでは鈴木さんお願いします。

鈴木:
 日東製網の鈴木と申します。こうのとり6号の宇宙ゴミ実験で使用する網状テザーの開発に取り組んでいます。

 弊社が主に製造している漁網は水の抵抗を受けて網の開き方が決まるのですが、抵抗のほとんどない宇宙でどのように網が開くのか非常に関心があります。宇宙空間で網や布を思うような形にうまく広げられますか。また、そのための工夫はありますか。今後の研究開発のヒントにしたいと思います。

大西:
 鈴木さん、どうもありがとうございます。非常に鋭いところを付いていると思いますけども、私がいま宇宙ステーションで生活、仕事をしている上でとても困っていることが、物をいかに安定させられるかということなんですよね。無重力状態では物がふわふわ浮いてしまうので、さきほどから見ていただいて分かるとおり、私たちの体もふわふわした状態なんですよね。

 その中で特に布といった柔らかい素材というのは、非常にはっきりとした形で収めておくことが難しくて、広げた状態にしておくことが難しいんですね。四隅の端をしっかり保持しないとちゃんとした形にならないので、私の2本の手だけではどうしようもないのですが、そういったところも含めて、必ず全部の隅を何らかの形で保持する必要はあるかなと思っています。

 まさにですね、そういった課題に関してですね、地上でいろんな分野で鈴木さんのように専門的な知識をお持ちで問題の解決にあたられている方の知識をですね、宇宙開発に力を貸していただきたいと思っています。そして、民間の力をお借りして、国際宇宙ステーションで行っている実験や研究を、さらに高いレベルへと昇華させていきたいと思っています。ぜひお力をお貸しください。ありがとうございます。

若田:
 今日は大西さんやルビンスさんのミッションを支えている中野フライトディレクターも来ています。中野さんは若手の女性技術者として活躍しています。中野さん、お二人にメッセージをお願いします。

中野:
 今回初めて運用管制官を取りまとめる役を任され、攻めの姿勢をモットーに、そして守りのバランスも意識しながらミッションに臨みました。かなり積極的にたくさんの仕事を入れるようにしてきましたが、軌道上から見ていかがでしたか。

大西:
 中野さんが適切にワークロードを管理してくださったおかげで、常に健康な状態で体調を崩すことなく、最後までミッションがんばれたと思っています。本当に感謝しています。素晴らしい働きでした。

ルビンス:
 中野さん、本当にお仕事ありがとうございました。感謝しています。すべてのきぼうの中での活動うまくいってましたし、JAXAの方々との協力もうまくいっていました。中野さんのリーダーシップ、あるいは地上のチームの支援によって、こちらのチームはとてもうまく行きました。ありがとうございます。

若田:
 鶴保大臣、長期滞在ミッションの成功に向けて大西飛行士に一言お願いします。

鶴保:
 大西さんのご活躍、多くの国民が期待しています。行われた科学実験や宇宙活動がイノベーションの種となって、新たな産業の創出につながっていくことを期待しています。我々もしっかり関連法案の議論をして大西さんのご帰還を待ちたいと思います。無事に地球へお戻りください。

大西:
 大臣どうもありがとうございます。残りのミッションは4日間と短くなりましたが、最後まできぼうでの実験を継続していきます。元気な姿で帰りたいと思っています。

若田:
 松野大臣、本日の締めくくりとして大西飛行士に一言お願いします。

松野:
 ISSきぼう計画は、宇宙が私たち人類の生活空間になりうるという希望を与えてくれました。30日の帰還ということでありますけども、がんばっていただいて、無事にお戻りになられることを期待しています。

若田:
 ありがとうございます。それでは大西飛行士、最後に一言お願いします。

大西:
 今回の長期滞在にあたっては皆さまからの応援が本当に力になりました。残り4日間、最後までがんばりたいと思います。元気に帰った後は、私が国際宇宙ステーションでやってきたこと、感じたことを一人でも多くの皆さまに共有させていただきたいと思っています。

 なるべく一か所でも多くいろんな場所を回って報告会を開催したいと思っておりますので、ぜひ聞きにいただけるとありがたいです。本当にうれしく思います。今日は本当にありがとうございました。

若田:
 大西さん、本日はどうもありがとうございました。

※10/30(日)に大西卓哉宇宙飛行士が地球に帰還する様子も生中継を行います。

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