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ダサいロックが、格好いいヒップホップの力を借りる「あやかりフィーチャリング」が今後は増える? 最新ポップス・コラボ裏事情を西寺郷太、宇野維正が語る

ロックとヒップホップの「コラボ文化」の違い

西寺:
 2つのグループやアーティストが一緒にやりはじめたのって70年代後半くらいですかね。クイーンとデヴィッド・ボウイとか。だから、(実力や知名度が)どう考えても、どちらも五分だっていう時には。「&」でしか表現できないものもあるんです。よくあったのが、マイケル・ジャクソン(ザ・ジャクソンズ)とポール・マッカートニーの時とかもそうですけれど、1曲ずつ制作して『セイ・セイ・セイ』をポール名義の曲にするとか。

宇野:
 実は、ロックの時代からヒップホップの時代になって、フィーチャリングという言葉が大きくなったんです。ロックの時代というのは、マイケル・ジャクソン&ミック・ジャガーみたいな、互角同士が「&」で共演していました。「俺と共演したかったら、俺のところまで登ってこい」という文化ですね。

マイケル・ジャクソンとミック・ジャガーのコラボ曲『ステイト・オブ・ショック』Amazonより。

宇野:
 それに対して、ヒップホップはフックアップの文化です。つまり、有名なヤツが若い無名のヤツを「俺がお前を引き上げてやるぜ」という文化。若いアーティストを先輩が引き上げることによって、「フィーチャリング」という言葉が優勢になっていった。

ビジネスでフィーチャリングする時代へ。

宇野:
 今は同格同士の競演ってあまりないですよね。たとえば、ドレイクとウィークエンドが一緒にやるとしたら、それこそデヴィッド・ボウイとクイーンがやるようなもんなんだけど。あと、ロックとヒップホップの繫がりといえば、(ロックバンドの)マルーン5が(ラッパーの)ケンドリック・ラマーやミーゴスを呼んじゃう場合があるんだけど、あれは同格でもフックアップでもなくて、ヒップホップで人気の人にあやかるっていう、「あやかりフィーチャリング」なんですよ。

マルーン5がケンドリック・ラマーをフィーチャリングした『Don’t Wanna Know』Amazonより。

宇野:
 たとえば、ケンドリック・ラマーは「ラップ1本5000万円で売る」と言っているわけですよ。アーティストによって、事情は変わるんですけど(マルーン5と同様にケンドリック・ラマーを起用した)サンダー・キャットは彼と友人だから、5000万円は払っていないはず。でも、マルーン5は払わないといけないと思うよ、友達じゃないし(笑)。

西寺:
 そもそもマルーン5は金あるしね(笑)。

笹木:
 「ビジネスフィーチャリング」みたいな(笑)。

宇野:
 みんな見ていてわかると思うんですけれど、カッコ悪いロックバンドがラッパーにあやかりたいっていう場合もあるんだよね。そこまでしないとロックバンドはもう生きていけない。今後確実に、日本でも(この現象は)出てくると思う。たとえば、Mr.ChildrenやASIAN KUNG-FU GENERATIONが、どこかのラッパーをフィーチャリングしたりとか、「型としての今っぽさ」を出すために、絶対にコラボが出てくると思う。ただ難しいのは、海外では(ロックが主流の)白人にも(ヒップホップが主流の)黒人にも聴いてもらえるきっかけになるからいいんだけど、日本の場合はそういうのがない。果たして広がるのか、というのは疑問です。

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