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ジェームズ・ディーンがいなければ『座頭市』も『子連れ狼』も存在しなかった!? 時代劇研究家が語るハリウッドスターと勝新太郎・若山富三郎兄弟の関係

 エンターテインメントを楽しむための深掘りトークプログラム『WOWOWぷらすと』 。今回のMCは学者芸人であるサンキュータツオさん、ぷらすとガールズの早織さん。ゲストに時代劇研究家の春日太一さんをお招きしました。

 春日さんの『トーク無双シリーズ』コーナーでは、役者・若山富三郎、勝新太郎兄弟について大いに語りました。兄弟の幼少期や気になる兄弟仲の話から、二人が映画界に入るきっかけとなった、ジェームス・ディーンとの出会いのエピソードが明かされます。

若山富三郎さんの代表作『子連れ狼シリーズ』Amazonより。

本当の天才は、勝新太郎ではなく若山富三郎

左から早織さん、春日太一さん、サンキュータツオさん。

春日:
 (若山富三郎さんの実弟である)勝新太郎さんの本を書く時に『天才 勝新太郎』というタイトルをつけているんですけれども。僕は勝新太郎さんは天才だと思っていなくて、あれは出版社がつけたタイトルなんです。本当の天才は、若山富三郎さんなんです。つまり、ありとあらゆる役柄を、全てやれちゃうところがすごい。

 こんな人は、仲代達矢さんと、若山富三郎さんの二人だけなんですよ。仲代さんは全部できちゃう人という認識を皆さんは持っているんですけれども、若山富三郎ってどちらかというと、おもしろおじさんのキャラクターなんですよ。つまり若山さんって、どうしても「役者としてすごい」とは、語られにくかった。実は仲代達矢さんと並ぶ日本の二大オールラウンドプレイヤーなんです。

スター勝新太郎と、「器用富豪」若山富三郎

春日:
 勝新太郎さんは不器用な人なんですよ。役の幅がないというか、芝居の幅がない。何をやっても勝新太郎であり、『座頭市』や『兵隊やくざ』『人斬り』みたいな3つぐらいのパターンで、どれもこれも、勝新太郎なんです。やっぱり勝新太郎さんはスターなんですよ。

勝新太郎さんの代表作『座頭市シリーズ』Amazonより。

春日:
 若山富三郎さんは、スターとして出演するときもあれば、役柄になりきっているときもある。とても器用なんですよ。器用な人に付く言葉で、器用貧乏という言葉があります。器用な役者は、使い勝手よく当てはめられて、代表作もないまま終わってしまう。成田三樹夫さんや夏八木勲さんがそうです。

 器用がゆえ、本当はもっと評価が得られるはずなのに、脇役の一人で終わってしまう。若山さんは器用貧乏ではなく、器用なうえ、ひとつずつ評価を得て、全部大ヒットを作った。「器用富豪」という、日本映画史で稀有な人ですね。

全く性格が違う兄弟が示した、芸に対するアプローチ

春日:
 兄弟はどう違うのか? 実はこの二人は全く性格が違う。芸に対するアプローチが違うんです。どっちも完璧主義者ですけれども、完璧という考え方が違っています。(若山富三郎さんの息子である)若山騎一郎さんが書いた本の中で、日本舞踊の取り組み方に二人の大きな違いがあると書かれています。

 二人とも、踊りが上手い。基本が1から10まであるとしたら、若山富三郎さんは1から10まで全て完璧にできる人。勝新太郎さんは、基礎は完璧にできて、その1から10をオリジナルにしていっちゃう人。だから二人とも完璧な芸ができるんだけれども、完璧の意味が違っている。より新しいクリエイティブなものを求めていったのが勝新太郎さんだとすると、若山富三郎さんは、そこでやるべき事を全て完璧にやるという人なんです。

サンキュータツオ:
 規定演技を完璧にやるのか、オリジナルをやるのかということですね。山の登り方に例えると、皆が知っているルートを完璧に登るのと、全く知らないルートを登るのか。兄弟二人とも個性があって面白いですね。

三味線方の家に生まれた兄弟が幼少期に選んだ道。

春日:
 二人を現すエピソードで、子供の頃に積み木遊びをするのが好きだったんです。若山さんは積み木を完璧に組み立てていくのが好きだった。一方、勝さんはその積み上げた積み木をぶっ壊すのが好きだった(笑)。そういう兄弟なんです 。

サンキュータツオ:
 じゃ、兄弟仲は良いんですね。

春日:
 ものすごく仲が良いです。勝さんは「あんちゃん」と呼んで、若山さんは「(勝新太郎さんの本名の)利夫」と呼んでいました。二人の父は三味線方の杵屋勝東治さんで、主に歌舞伎の裏側で伴奏をしていた人でした。その跡継ぎとして二人は生まれてくるわけです。今でもそうですが、伝統芸能の家は、5歳や6歳の時には仕込まれて、舞台に立つというのが決まっています。

 若山富三郎さんは6歳で三味線をはじめましたが、自分に向いてないと思ったようです。それに、弟が三味線の天才的な才能があったので、父親が弟に全部任せる、と言いました。それで若山富三郎さんは何をやったかというと、柔道です。これが後に役者として効いてきます。柔道を五段までいったんですよ。

サンキュータツオ:
 五段!?

春日:
 この兄弟は、歌舞伎では裏方だったんですけれども、どこかで役者になる憧れが強かったようです。自分たちの町に芸の旅一座が来ると、チンドン屋がビラ配りをするんですけれど、勝手に兄弟二人でビラ配りをやったりとか。

サンキュータツオ:
 いい話ですね。

春日:
 お父さんが「子供がビラを配ってるのか、いいな。って、うちの子供じゃねーか!」みたいな話があったんです(笑)。トンボを切る【※】というのを、いつ身につけたかというと、(幼少期に)兄弟二人がチャンバラごっこやっていたときなんです。

※トンボを切る
歌舞伎用語で、宙返りをすること。

 この二人のチャンバラごっこですから、子供といっても、公園の砂場で超本格的にやっていたそうです。例えば、その日に公演を見てきたら「あの技を盗もう」と言って、二人でずっとチャンバラをやりながら、トンボをやって身につけたというエピソードがあります。

サンキュータツオ:
 すごい。漫画みたいな話だな(笑)。

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