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「オタク文化とラップが結びつくとは誰も思ってなかった」 ニコニコ動画黎明期に花開いたラップ文化をレジェンドが語り尽くす【らっぷびと×タイツォン】

黎明期はラップとオタク文化の融合は考えられなかった

――ちなみにその時disられた内容は覚えています?

らっぷびと:
 何だったっけ? ふんどけで結構アンサー返しているはずなんですよね。なんか、アニソンラップやっているのが面白くないみたいな。ちゃんとHIP-HOPやれよ、お前。みたいな感じだったと思います。

――ありがちな当時のネットラッパー批判みたいな。

らっぷびと:
 やっぱり、どうしてもオタク文化とラップって結びつかない時代だったんで。

――そうですね。

らっぷびと:
 キタキターみたいな感じでしたね。

自分で燃料投下をするタイツォンの作法

――タイツォンさんは今までBEEFに発展したりなかったんですか。

らっぷびと:
 タイツォンは自分から燃料持ってくる。

一同:
 (笑)

らっぷびと:
 祭りやっているのか? わー! みたいな(笑)。水かけているつもりが、ガソリンぶっかけているみたいな。

タイツォン:
 それが伸びるとは思わなかったしな。

――『【※】disdisにしてあげる』は2008年くらい?

※disdisにしてあげる
 現在は視聴不可

タイツォン:
 そうですね多分。もうちょっと後かな。

らっぷびととタイツォンが語るニコラップの10年

――2017年、今年でニコラップってタグが出来て10年の節目になるんですけど、ニコラップを振り返ってみて、当時一番盛り上がったところと今比べてどうだったとかありますか?

タイツォン:
 俺たちが、これがニコラップだって言って掲げているものじゃ無いから、俺自身はあまりニコラップってものに対してどう思うとか、どうあってほしいとか一切ないんです。だけど、らっぷびとさんは自ら掲げたものではないにもかかわらず、ネットラップシーンを背負っているじゃないですか、そういう使命感を持って界隈を盛り上げていきたいみたいな動きするのがすごいなと思う。

らっぷびと:
 そこしか無いから。唯一の家だから。

タイツォン:
 いやでもそれがすごいと思う。俺はニコラップって名乗ったつもりはないし、そっちで勝手に盛り上がっているだけでしょ? くらいにしか思ってなかったから。だからそれこそガチガチのラップみたいなニコラップみたいなこと僕はそれこそ、ボーカロイドの曲のアレンジとかもあるから、割とニコラップとは違うジャンルにいる、みたいなのがあって。

らっぷびと:
 HIP-HOPが好きっていうのと同じくらいの感覚だと思うんですよね。俺はニコラップを含めた上でネットラップが好きで、でも誰かから見たニコラップは、ボカロラップをする、アニソンラップをする人たちをニコラップって言うけど、別の人から見たら、ニコニコ動画上でラップをしている人たちとか、いろんな見方があると思いますが、ひっくるめて俺はネットラップだと思ってます。

――なるほど。

らっぷびと:
 らっぷびとになって、運良くCD出させてもらえるようになって、みんなが神輿として担ぎ上げてくれた時代があったんで、その時にこう、良くも悪くも先駆者になってしまった感があるので、そこは義務みたいになっている部分ありますけどね。そうしてもらったんだから何か、恩返しできればなあと思って。

みんな踊った! みんな歌った! 『オーディエンスを沸かす程度の能力』制作秘話

――次に『オーディエンスを沸かす程度の能力』についてお聞きしたいです。制作秘話、意識した作品などがあれば教えてください。その当時のユーザーからの反応、発表前後で変化したところなども。

らっぷびと:
 それはですね、ちょっと面白い制作秘話、今まで一度も話したことがない。

――おっ!?

らっぷびと:
 タイツォンは知らない。この『オーディエンスを沸かす程度の能力』というのが、元々IOSYS(イオシス)という東方アレンジのサークルの『月夜を二人で抜け出す程度の能力』という楽曲があって、それのイントロ部分を僕が無理やり、ぶっちぎって伸ばしたりして、オフボーカルを自分で作ってやったものなんです。

――じゃあ元ネタがあると。

らっぷびと:
 そうです。イオシスさんの曲が結構前にあって、トラック滅茶苦茶かっこいいし、これにラップ乗せたら映えるだろうなってずっと思っていて。ネットラップとしてオリジナル楽曲として作ろうと思っていたんです。で、タイツォンじゃない別の奴と作ろうとして、一回ポシャっているんです。

タイツォン:
 えっ! 知らなかったそれ!

一同:
 (笑)

らっぷびと:
 でしょ。俺【※】yack(ヤック)と作ろうとしたの。

※現在はNOA&PEACEというグループで活動中

タイツォン:
 マジで! そうなんだ!

らっぷびと:
 それで、『オーディエンスを沸かす程度の能力』というテーマでもないし、本当に別のもっと、ただただオシャレで終わるようなラップソングにしようと思っていたのが、ポシャって、でも、このトラックでずっとやりたいなっていうのを温めて。

 で、ニコニコ動画で投稿するようになって、これを出すならここだなと思って、タイツォン誘って『オーディエンスを沸かす程度の能力』を作った。

タイツォン:
 すっげえ、そうなんだ。
 初めて聞いた。知らなかったわ。でも、その二次創作がウケていたわけで、ニコニコで。そう言った意味でもかなりマッチしていたよね。

らっぷびと:
 そうだね。ちょうどよかった。やっぱタイトルのインパクトはね。それもイオシスさんとか、元の東方のを拝借した形ではありますけども、面白いタイトルだなと。

タイツォン:
 うんうん。

らっぷびと:
 あの時代はやっぱり二次創作の勢いがあったな。

――ちなみに『オーディエンスを沸かす程度の能力』をやろうってタイツォンさんに声をかけた時は、ふたりは会っていましたか?

らっぷびと:
 いや、『オーディエンスを沸かす程度の能力』作っている時は、俺まだタイツォンとは会ったことない。

タイツォン:
 そうだね。

らっぷびととタイツォン運命の出会い

らっぷびと:
 『オーディエンスを沸かす程度の能力』を投稿した翌日くらいに、俺タイツォンと初めて会って北海道でライブしたんですよ。昨日あげた曲みんな聴いたか? みたいな、100人にも満たないクラブでオーディエンスに。

――その日のライブが、初対面と。

らっぷびと:
 それまではずっとネット上でのやりとり。

――じゃあ曲のミックスとかもお互い録った声とか送って練習して、アップしてって感じだったんですか?

らっぷびと:
 そうですね。

ふたりが初対面で交わした言葉は?

――札幌の現場で会った時、何て言ったんですか。「はじめまして」?

タイツォン:
 「やっと会えたね」とかなんか。

らっぷびと:
 そんな感じだと思う。

――SkypeとかMSNメッセンジャーでいろいろ話してたし、と。

タイツォン:
 でも通話はあんましたことないよね。ずっと文字だけのやりとり。こんなでかい人だと思ってなくって。

一同:
 (笑)

タイツォン:
 当時サングラスだったじゃん。MSNメッセンジャーのサムネイルとかも。だから怖い人なんじゃないかなって思っていました。

らっぷびと:
 あ、本当?

タイツォン:
 うん。俺結構怖かった(笑)。

――ちなみにらっぷさんは、会う直前までタイツォンさんの印象はどんな感じでした?

らっぷびと:
 会ったらそのままだったんですけど、見た目はチャラって思いましたね。でも喋ったら「全然チャラくない。むしろ大人しい」って。

タイツォン:
 (笑)

――初対面は北海道ということですが、初めて関わりを持ったのはいつだったんですか?

らっぷびと:
 あの「Alkaloid」っていうサイトですね。もうちょっと詳しく言うと、さっき言った「Underground Theaterz」っていうのが、僕らが流れ着いた時にはもうある程度有名な人とかいて、ちょっとハードル高い掲示板だった。それで、「Alkaloid」が初心者用に新しく作った場所みたいな感覚なので、やり始めの俺たちは初心者としてそっちで活動してました。そこで多分お互いに毎日のように投稿する仲で、レスし合って。それこそMSNメッセンジャーとか。

――なるほどー。ちなみに今はプライベートでの付き合いってあるんですか?

タイツォン:
 ほぼ、無いんじゃない。

らっぷびと:
 うん。いかんせん北海道と東京だしね。

タイツォン:
 そう。別に多分、俺がこっち住んでたりとかしたら、どっか遊び行って、メシ食いに行こうみたいなのはあると思うんですけど。

らっぷびと:
 うん。ただその、らっぷびとがCDデビューしたくらいの時に、北海道にJazadocumentというラッパーがいて、ネットラップもやっていたけど、現場寄りで、今も現場でガンガン活動している奴なんですけど、そいつが何かとイベント招待とかしていて、らっぷびととかを呼んでくれたんですよね。なので、北海道行く機会が何度もあって、その時にタイツォンと会って、一緒にライブしたりとか、話したりとかが増えたというのはありますね。
 
タイツォン:
 うん。

らっぷびと:
 そのオーディエンスを投稿した翌日にライブしたのもそのジャザくんのイベントだったんで。そいつのおかげで、リアルで会ったっていう。あとはまあドワンゴ系かな。公式イベント。

――じゃあもう二人が会うのは基本的には現場って感じなんですね。

タイツォン:
 そうだね。

――住んでいる場所が、これだけ離れていて、ちょくちょく会う機会があるというのも結構すごいことですよね。

らっぷびと:
 確かに。

タイツォン:
 今でも、たまにあるっていうのはすごいよね。

らっぷびと:
 うん。10年経っても。

タイツォン:
 もう10年どころじゃないでしょ(笑)。13年とか?

らっぷびと:
 最初タイツォンも中学生だったからなあ……。

タイツォン:
 俺が高校の修学旅行とかで東京行く時があって、その時に会いたいなって思って連絡したんだけど、会えなかったんだよね。

らっぷびと:
 なんかタイミングが合わなくて。タイツォン東京に来ているんだったらどっかで会う時間あるんじゃないかと思ったけど結局会えなかった。遠距離恋愛みたいな。

一同:
 (笑)

――キュンとしちゃいました。

タイツォン:
 すれ違いがあったよね。

らっぷびと:
 それこそ20歳前の奴がネットの友達に会うために飛行機乗ってというのはなかなかないですよ。特に引きこもりだったし俺は。あまり考えつかなかったかな。まあネットで普通に話していたんで。なんかそれはそれで満足していたっていうか。

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