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トランプショックでアメリカ映画は政治性が強くなる。キャプテンアメリカ、アイアンマンら、世代交代も迫るアメコミ映画のメッセージは?

 エンターテイメントの様々なジャンル・作品を楽しむための深掘りトークプログラム『WOWOWぷらすと』。今回のMCは中井圭さん、ぷらすとガールズの梨衣名さん。ゲストに評論家の添野知生さん堺三保さんをお招きし、アメコミ・ヒーロー映画はアメリカの歴史と、どのようにリンクしてきたのかをテーマに語り合いました。

 西部開拓時代の精神を引き継ぐ旧来のアメコミ・ヒーロー像が、どのような変容を遂げたのか。トランプ政権の誕生後、緊張を強めたアメリカ社会はヒーロー達にどのような影響をあたえているのでしょうか。

『チーム キャプテン・アメリカ』マーベル公式サイトより。

アメコミ・ヒーローの源流は西部劇のガンマン

左から梨衣名さん、堺三保さん、添野知生さん、中井圭さん。

中井:
 最近は、たくさんヒーローが出てきますけど、「アメコミ・ヒーローの役割は何なのか」 という話をしたいなと。

堺:
 アメコミのスーパーヒーローって、基本的には人間ではなく、超能力者のような存在ですよね。現実には存在しないけど、アメリカ人にとって、人を勇気づける象徴的な存在だと思う。胸にSの字が書いてある、あの『スーパーマン』が「俺は常に正義のために闘うんだ」って言い続けてくれてる。そういう人がいて欲しいよねっていう願望が、私達にもできることは無いでしょうか、っていうのに繋がってる気がすんだよね。有名な『スパイダーマン』のセリフ「大いなる力には、大いなる責任が伴う」、大きな力じゃなくても良くて、自分にできる範囲で良いことをしましょうっていう問いかけにもなっている。

添野:
 アメコミのスーパーヒーローで日本から見てわかりにくいのは、エリア主義です。ニューヨーク、しかも、更に狭くブルックリンだけとか、ヒーローが活躍する縄張りが決まってるんだよね。あれは、できることをやりましょうってことなんですよね。

『アメイジング・スパイダーマン2』公式サイトより。

堺:
 そうそう、自分の住んでる町を守りましょう、ということ。『ジャスティス・リーグ』【※】は地球の為に集まるけど、いつもは自分の町をみんなそれぞれ守ってるわけですよ。『バットマン』はゴッサムシティ、『スーパーマン』はメトロポリスとかね。

※ジャスティス・リーグ
DCコミックスの刊行するアメコミに登場する架空のスーパーヒーローチーム。中核となるメンバーは、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン。

中井:
 頭に浮かんだのは、ゆるキャラとかの、地元を守ってる「ご当地ヒーロー」(笑)。

番組スタッフ:
 それは、根本にある話だと思います。だから、自分の町と隣町で困ってる人が同時にいた場合、どちらを助けるのか、という問題を解決するときに、エリア主義を採るのはすごく重要な考え方ですよね。

堺:
 ハードボイルド小説の研究で有名な小鷹信光さんが何度も書いおられるんですけど、全ての源流は西部劇のガンマンなんだよね。西部開拓時代は、点々と小さい町があって、当時はそれぞれのところに辛うじて町の人が選んだ保安官がいるだけで、アメリカ全土をカバーできない。

堺:
 それぞれの町が犯罪に対して自衛するしかなかった。だから、アメリカのヒーロー像というのは自衛をすることなんです。自衛が悪い方へいくと、暴走した自警団にもつながってしまう。それがアメコミのスーパーヒーローの原点なんです。

中井:
 単純に疑問なんですけど、なんでニューヨーク界隈にヒーローが多いんですか。

堺:
 あれはね、マーベル・コミックがそうしたんですよ。実はDCコミックスは架空の町にヒーローがいる。マーベル・コミックはそれをやめて全部ニューヨークにしちゃったんですよ。

添野:
 でも、DCコミックス作品の架空の町、ゴッサムシティとかメトロポリスとは言っても、みんなニューヨークじゃないですか(笑)。

番組スタッフ:
 ニューヨークが犯罪で大変な時期ってあったと思うんですよ。1950年代後半から70年代まで、かなり危ない町だったと思うんですけど、そういう背景は影響していますか。

堺:
 60年代にマーベル・コミックのスタン・リー【※】がそれを始めたのはDCコミックスへの対抗です。実際のニューヨークをスーパーヒーローが闊歩してた方がリアリティが出ておもしろいんじゃないか、ということですね。

※スタン・リー
アメコミの漫画原作者。マーベル・メディア名誉会長。主な作品に『スパイダーマン』、『アイアンマン』など多数。

番組スタッフ:
 確かに、『シン・ゴジラ』で、ゴジラが多摩川をわたる瞬間、すごく興奮しましたよね。

添野:
 読者の子供達にとっても、自分の町にいるとか、隣の町に本当にいる設定の方が受けると思ったんだろうね。

社会がヒーローに投影される『黒い肌のキャプテン・アメリカ』

中井:
 今後の展開も考えると、演じる役者が代替わりするじゃないですか。

堺:
 すでに、『キャプテン・アメリカ』は演じているクリス・エヴァンスが降板すると言ってますから。原作ではすでに、『キャプテン・アメリカ』と『アイアンマン』と『マイティー・ソー』は代替わりを果たしているので、映画でも代替わりするんじゃないですか?

中井:
 代替わりをすることによって社会が抱えてる課題を、キャラクターに投影するというのは十分考えられることですよね。

アフリカ系アメリカ人のヒーロー『ファルコン』公式サイトより。

堺:
 俺の予想では、原作通りキャプテンは黒人になると思う。だから、『ファルコン』【※】がキャプテンになり、『アイアンマン』と『マイティ・ソー』は女性になるんじゃないですかね。原作では女の人がハンマーをもって女性ソーになって闘っています。映画だと、どうなるかわからないですが。

※ファルコン
『キャプテン・アメリカ』に登場するヒーローキャラクター。ニューヨーク市ハーレム出身の設定で、マーベル・コミック初のアフリカ系アメリカ人ヒーロー。

梨衣名:
 どんどん女性が増えていくんですね。

堺:
 とにかく、マーベル・コミックは女性とか黒人とか、白人男性以外を増やしたいようですね。やっぱり若い子に読んでもらいたいから。

添野:
 現実問題として、ロバート・ダウニー・Jrの年齢を考えるとちょっと厳しいでしょ。

堺:
 多分、初代『キャプテン・アメリカ』、初代『アイアンマン』が今いるリーダー的な地位は、ベネディクト・カンバーバッチ扮する『ドクター・ストレンジ』あたりがとるんじゃないかな? 役者のキャリア的にも私はそう思ってます。

トランプの登場でアメリカの映画の政治性は、より強くなる

番組スタッフ:
 現在も大きい中国の影響力がもっと大きくなっていったら、アメリカンウェイじゃなくてチャイニーズウェイで、東洋人のヒーローがアメコミ映画に現れたりするんでしょうか。

添野:
 その辺は『ドクター・ストレンジ』のホワイトウォッシュ問題【※】がありましたね。

※ホワイトウォッシュ問題
アメリカの映画業界で白人以外の役柄に白人俳優が配役されること。映画版『ドクター・ストレンジ』において、エンシェント・ワンという東洋人のキャラクターをティルダ・スウィントンが演じたことが物議を呼んだ。

堺:
 難しいね。原作にはアジア人ヒーローはいくらでもいるんだけど、マイナーなんです。でも、できるかもしれないですね。

添野:
 その、エンシェント・ワンを白人の女性にしたことで怒られるということを、僕から見るとね、理屈としてはわかるけど、実感としてはピンとこない批判だな。堺さんはずっとアメリカにいて、そういうことはよく知っているから、実感としてわかりますか。

堺:
 わかる。ああいうことをされて一番怒っているのはアメリカにいるアジア人の役者なんですよ。アジア人の俳優は、『ゴースト・イン・ザ・シェル』だって、「なんでスカーレット・ヨハンソンなの?」って思ってますよ。

添野:
 僕らからすると、もともと草薙素子が日本人だと思ってないけど、アメリカにいる役者さんにとっては死活問題だもんね。

堺:
 僕ね、予言すると、これから1~2年の間に、アメリカの映画はアクション映画・娯楽映画はもちろん、シリアスなものも含めて、政治性はすごく強くなると思います。トランプ大統領が誕生してまだ100日も経ってないのに、これだけ揉めてる。しかも、トランプはメディアを敵に回して宣戦布告状態です。メディア側もそれに対して、FOXニュースですら一部の番組は対決姿勢を露にしています。そこまで至っている状況を加味して考えてみると、どう考えてもやっぱり政治的な、特に独裁批判の映画は増えると思いますね。

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