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宇宙開発ブームに大打撃!? 通信衛星に変わるコスト激安の“イオン風飛行機”の実用化で「宇宙ビジネスはあっという間に廃れる」未来を評論家が提言

 毎週日曜日、夜8時から生放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。12月2日の放送では、パーソナリティの岡田斗司夫氏が最近気になるニュースを紹介し、そこから見えてくる未来についての解説が行われました。

 この中で岡田氏は、マサチューセッツ工科大学の研究チームが、“イオン風”を利用した飛行機を開発したというニュースを紹介し、「この技術がさらに勧めば、現在の宇宙開発ブームに大きな影響が生まれる」と語りました。

岡田斗司夫氏

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「イオン風を利用した飛行機の実用化」から見えてくる未来

 みなさん“イオノクラフト”って聞いたことありませんか? だいたい、中学校とか高校の物理研とかが学園祭で発表している「アルミホイルで作った輪っかみたいなものを用意して、その中に電極代わりの針金を通して電気を流すと、そいつがフワフワと空飛ぶ円盤みたいに浮く」というやつなんですけども。

 実は、1968年の映画『2001年宇宙の旅』に出てくる宇宙船“ディスカバリー号”の推進エンジンもそうなんです。まあ、このイオン推進自体は、それくらい枯れた技術というか、昔からある技術なんですね。

 「その効率がどんどん上がってきて、本来、微弱だったイオン推進の力だけで飛行機が飛べるようになった」というのが、今回のニュースなんですけど。これだけ聞いても、なんで僕がここでわざわざ大きく取り上げるかわからないと思うんですけども。これね、今の宇宙開発ブームにとっては大打撃なんですよ。

「“イオン風飛行機”のイメージイラスト」
画像はMIT公式HPから

最近の宇宙開発の目的は「通信衛星を低コストで打ち上げること」

 最近、民間の宇宙開発が盛り上がって来てるんですけども、あれって要するに何なのかというと、有人宇宙飛行とか観光旅行を目的としている所なんてほとんどないんです。宇宙開発をやってる所が狙っているのはいかに安く通信衛星を打ち上げることが出来るかなんですよ。

 通信衛星というのは、物理的な部品が組み合わさって作られているわけですから、当然、寿命があるんです。ハッブル望遠鏡も、この間、寿命を迎えました。人工衛星というのは、故障するし、あとは、無視できると思っていた僅かな軌道のズレも、段々とズレが大きくなってくると静止衛星としての利用が出来なくなるんです。

 それよりも、実はこういった技術を使って出来るだけ軽く使った無人機の中に、通信衛星と同じような部品、またはWi-Fiの基地局のメチャクチャ軽くしたやつを載せて世界中の空で無数に飛ばす方が、よっぽどか安く出来るんですよ。

 この「よっぽどか安く」というのが大事なんです。なぜ、民間で宇宙開発をやってるのかというと、「開発を続ければ、もっと安く通信衛星を飛ばせるようになる」と、みんな思っていたからです。だけど、もっと安い費用でほとんど同じことが出来るなら、通信衛星である必要はないじゃないですか?

 「そんなこと言っても、この実験の飛行機はまだまだ小さいじゃないか」と思った人もいるかと思うんですけども、飛行機というのは、実は小さく作る方が難しいんですよ。

 “ゼロ戦”という飛行機は、実際に空を飛びますよね? じゃあ、16分の1スケールで精密に作ったラジコン機のゼロ戦が飛ぶのかというと、飛ばないんですよ。よく飛ばない上に落ちやすい。飛行機というのは、実際は「大きく作れば作るほど飛びやすい」ようなものなんですね。まあ、強度とかはあるんでしょうけど。

イオノクラフト・ドローンの可能性

 ここでは“イオノクラフト・ドローン”と仮に呼びますけど。そういった、30メートルくらいの、イオン推進で動く簡単な複葉機のような壊れにくいドローンを作って、そこにWi-Fi基地局を載せて飛ばす。

 動力は翼の上の太陽電池で、だいたい高度5000メートルくらいを飛行させる。なぜかというと、高度5000メートルとか3000メートルくらいになってくると、雲がほとんどないからです。すると、ソーラーパネルの効率が最大化されるわけですね。それを数キロ間隔に1機ずつ飛ばす。そこで、ずっと周回飛行させてればいいわけですね。雲のない上空では、太陽電池はドローンにとって理想のエネルギー源でしょう。

 ドローンは故障警報があるまで同じ場所をずっと周回して飛んでいればいいだけなんですよ。故障警報があったら、指定の場所に着陸させて、修理して、また飛び立つ。たぶん地球全域をカバーするために、10億機もいらないと思います。そして、コストが安い無人機を大量に飛ばすなんてことは、日本くらいの経済規模がある国だったら簡単に出来ちゃうことなんです。

 もちろん、気流に流されるし、台風とかいろんな影響があるんでしょうけど。ただ、たとえ、ある箇所のドローンが100キロとか500キロ飛ばされることがあったとしても、別の場所のドローンが、代わりにそこにやってくればいいだけですから。地球全域に、ほぼ均等にドローンが配置されてればいいんですよ。

 台風みたいなエラいことがあったら、そりゃ、その数時間のうちは通信衛星を使うことになるんでしょうけど、台風がやんだら、やがて“ドローンの再配置”というのが行われるはずです。それぞれがGPSを持っているでしょうから、風上のドローンから順番に再配置されれば、地球全域を数キロ四方ごとに、ポンポンとドローンが周回で飛んでいる状態を維持するのは可能だと思います。

 そうなってくると、静止衛星の目的というのは、即位情報……いわゆる「自分が今どこにいるのか?」を知るくらいになってくるんですけど。これも、数十個、多く見積もっても数百個しかないような通信衛星をいちいち使ってやるよりは、地上と常に通信しているドローンの方が、おそらく座標としてはわかりやすいはずなんですよ。

 例えば、世界中、色んなところにある、ポイントとなる“兵庫県明石”とか“イギリスのグリニッジ天文台”みたいな場所と通信をして、自分の絶対位置というのをそれぞれのドローンが常にわかっていれば、複数のドローンとの位置関係から割り出した方が正確になるはずなんです。おそらく、誤差数センチとか数ミリというレベルで、自分の座標がわかるようになると思います。

宇宙ビジネスは“もっと安い技術”によって淘汰される?

 この無限に飛べる通信ドローンというのが実用化された場合、通信衛星を打ち上げるよりも、こっちの方が圧倒的に安上がりになって、「化石燃料を大量に使って衛星を打ち上げて、壊れたら諦める」という現在の宇宙ビジネスは、あっという間に廃れると思います。

 「これからは宇宙ビジネスだ!」と思っている人は、まだ、これの可能性にあんまり気が付いていないと思うんですね。「それは、もっと安くて簡単な技術で取替えがきく」という発想になっていないんです。

 僕も「宇宙ビジネスはこれからは絶対に行ける!」と思ってました。自分自身でも「全財産の3分の1くらい、これに賭けてもいいんじゃねえかな?」と思ってたんですけど、この技術が出てきたおかげで「ちょっと待てよ。その3分の1を半々に分けて、半分はこっちのイオノクラフト・ドローンにしといた方がいいかも」なんて思ってます(笑)。

 たぶん、近未来の夕焼けは「普段は見えない数キロごとに空中に浮いている無人のドローンがパーッと光って、空全体にドローンに反射した光の帯が東から西へザーッと流れている中で夕日が沈むのが見える」という、そういう美しい眺めになるんじゃないかなと思います。

 問題は、こういうのを「ウザい」と感じるかどうかなんですけど。どうなんでしょうね? 電信柱よりは気にならないし、新たな都市風景というか地球風景になるんじゃないかなというふうに思います。

▼記事化の箇所は18:33から視聴できます▼

#259表 岡田斗司夫ゼミ「AI時代の『経済と正義』

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