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発射4秒で墜落の“ホリエモンロケット”ことMOMO2号機は、あえて「100年前の技術」を使ってコストを削減していた

 毎週日曜日、夜8時から生放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。7月15日の放送で、パーソナリティの岡田斗司夫氏は、6月30日に行われた“ホリエモン”こと堀江貴文氏が設立した民間宇宙開発企業インター・ステラ・テクノロジズの観測ロケット「MOMO2号機」の打ち上げと、その墜落事故の話題について触れました。

 その中で、岡田氏は同ロケットのコンセプトについて解説すると共に、「失敗を繰り返せるという、ロケット事業の未来は明るい」と語りました。

岡田斗司夫氏

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ホリエモンのロケットはなぜ墜落したのか?

岡田:
 6月30日に北海道で打ち上げた“インター・ステラ・テクノロジズ”(IST)のロケット“MOMO2号機”が、わずか4秒で墜落しました。原因は不明ですが、燃料の燃焼圧力が低下し、出力が低下したと説明されています。

 ホリエモンのロケットである“MOMO”シリーズというのは、もともと性能は低めだけど、必要十分にあって、コストがめちゃくちゃ安いというところを狙って作られているんですよ。

 だいたい、長さが10mあって、2号機に関しては、1トンくらい重さあるんですよね。本当は定義上、地球と宇宙の境界線である高度100kmまで到達できる性能があったはずだったんですけども、爆発しちゃいました。なぜ爆発したのか?

 これがホリエモンのロケットのエンジンの仕組みです。実はこれ、かなり簡単な仕組みで出来てるんですよね。

 ロケットの技術って、実は1960年代のアポロ計画の“サターンV型ロケット”くらいまでで、99%は完成しているんですよ。そこから先の4、50年間のロケット研究というのは、「残り1%をどこまで詰められるか?」ということを、ずっとやっているんです。

 このホリエモンのロケットは、液体酸素とエタノール……まあ、ガソリンみたいなものを燃料にして、ヘリウム窒素ガスで燃料タンクに圧力を掛けることで、この燃料をエンジンのところまで持って行って、噴射して、そこで燃焼させるという、すごく単純な仕掛けなんですね。

ホリエモンロケットの原理は「100年前の技術と同じ」

 どのくらい単純かというと、このガスによって燃料に圧力をかけて運んで噴射させるという仕組みは、1926年にアメリカのロバート・ゴダードという人が作った、世界最初の液体燃料ロケットと原理的に全く同じなんですね。

 実は、これ以後のドイツのV2号ロケットとかでは、“ターボポンプ”というポンプで燃料を運んで燃焼させるという仕組みに進化してるんですけども、ホリエモンのロケットは、あえてゴダードの時代まで技術を退化させているんですよ。ここら辺が、テレビとかの報道では扱われない部分なんですよね。

 「ロケットというと、きっとハイテクに違いない」と、みんな思いこんでるんですけども、違うんですね。ホリエモンたちがやろうとしているのは、あえて、そこに使用する技術を、既に枯れたようなレベルまで退化することによって簡単に扱い、それによってコストダウンしようということなんです。

 まあ、そのかわり、燃料のインジェクター【※】……これは“衝突型インジェクター”っていうんですけども。こういったインジェクターの形式とかは、もうバリバリの最新の技術でやっていこうというふうになってるんですけどね。

※インジェクター
ガソリンエンジンなどの燃焼機関で、液体の燃料を噴射する装置。燃料噴射装置ともいう。

 「軽い衛星を格安で打ち上げるため」ということで、コスト削減のために、部品なんかも民生品をガンガン使っているんです。でも、実は民生品で十分なんですよ。中国とかロシアのミサイルや誘導兵器も、一番大事な誘導部品とかは秋葉原で買ったような部品をバンバン使ってますから、日本の民生品を使っていれば、そこらの国の軍用品よりは、ずっと性能がいいんです。

液体燃料ロケットは“爆発して当たり前”

 「爆発したし、もうダメだろ」とか言われているんですけども。液体ロケットなんて、正直、爆発して当たり前なんですよ。V2号ロケットというドイツ最初の液体ロケットも、最初の50発くらい、全部爆発したんです。だけど、その爆発のおかげで、データが取れたんですよ。

 実用化した後も、V2号ロケットは、ロンドンに向かって1100発も打ち込まれたんですけども、無事に届いたのが500発くらいしかなくて、半分以上は途中で落ちてるんですね。ただ、この失敗があったからこそ、ドイツは当時の世界の最先端に行けたわけです。もう本当に、ロケット開発では「失敗の回数=経験値」みたいなものなんです。

 模擬試験受ける回数みたいなものだと思ってくれてもいいんですけど。今回の爆発について、「発射4秒で推力が足りなくなって、燃焼圧力が消えた」って言ってますから、原因は、もう実に簡単な話で。“エタノールマニフォールド”か“液体酸素マニフォールド”という、エンジンに繋がるパイプのジョイント部分、もしくは、中のインジェクターあたりの不調くらいしか、原因が考えられないんですね。

 または、このヘリウム・チッ素ガスの圧力がどこかから漏れていたという可能性もあるんですけど。ガスが漏れれば、内部のセンサーが検知しているはずなんですよね。なので、「急にエンジン燃焼圧力が消えてしまった」ということならば、エンジンのソケット周りくらいしか考えられるところがありません。正直言って、あと10回連続で“失敗することができたら”、もう絶対に大丈夫になるはずなんですよ。

 そして、ホリエモンのロケットの強みは、打ち上げ1回につき、だいたい3千万円から4千万円くらいしかコストしか掛からないところなんです。つまり、最大10回失敗するにしても、3億円使う覚悟さえあれば、宇宙まで確実に打ち上げるられるようになるということなんですね。

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