話題の記事

「今のポケモンが在るのは岩田さんのおかげだ」…『ポケモン』シリーズを支え続けた任天堂・岩田聡元社長の数々の偉業に涙が止まらない

仕様の理解から変換までを一人でやり遂げた岩田氏

魔理沙:
 赤・緑のローカライズとほぼ同じ時期に、NINTENDO64ソフト『ポケモンスタジアム』も開発されていました。ポケモンのシステムのひとつである「通信対戦」にクローズアップした作品ですね。

 ただ、例によって、ゲームフリークの人たちは、金・銀の開発でそれどころではなかった。そこで手を差し伸べたのが……。

霊夢:
 岩田氏ですよね。

魔理沙:
 いかにも。岩田氏は、まず赤・緑の戦闘プログラムを読み込み、バトルロジックを解析して、任天堂の宮本茂氏たちのチームに渡すことになります。この戦闘プログラムは、ゲームフリークの森本茂樹氏が、とても長い時間をかけて作りました。森本氏曰く、「非常にわかりにくいプログラム」で、仕様書などもありませんでした。

 岩田氏は、「アセンブリ言語」という言語でできた、ゲームボーイ版のソースを見ながら、それを異なる言語、「C言語」に書き換えるというやり方で作ることにしたのです。

霊夢:
 まさに、世紀の天才プログラマーですね。

魔理沙:
 本来は、現場の開発者に聞くような質問も、ハル研究所の社長だったはずの岩田氏が答えてくれて、「この人はなぜこんなことができるのか?」と驚くばかりでした。

魔理沙:
 その結果、岩田氏はわずか1週間で言語を移植し、『ポケモンスタジアム』は、1998年8月1日に日本国内で発売。売上本数は約137万本でした。

開発にとどまらない岩田氏の手腕

魔理沙:
 そして、岩田氏のサポートもあり、待望の『ポケットモンスター金・銀』は、1999年11月21日に無事、発売されました。金・銀発売後の2000年頃に、全世界中でポケモン人気が爆発することとなります。

 しかし、ここで大問題が発生します。

魔理沙:
 元々、ポケモンの基本になるライセンス(権利)は、任天堂がハンドリングしていましたが、世界中で人気が爆発した際に、コントロールが効かなくなってしまった。世界中で見たこともない商品が溢れ返り、それらは一切、ポケモンに関係する側の利益につながらない。

 これは問題だということで、ポケモンに関わる全ての権利を集約し、コントロールをする仕組みを作ることになりました。

霊夢:
 ものすごく難しそうな問題ですね。それももしかして……いや、さすがにプログラミングは関係ないし……。

魔理沙:
 この時に調整役に立ったのが、岩田氏でした。岩田氏は、国内にとどまらず、世界中で調整役までこなしました。

霊夢:
 世界中で!?

魔理沙:
 ハル研究所から任天堂に入社した初仕事のひとつが、株式会社ポケモンの立ち上げでした。岩田氏は、任天堂、米国任天堂、クリーチャーズ、ゲームフリーク、テレビ東京、JR東日本企画、小学館なども含めて、全て交通整理をして、「株式会社ポケモン」への道を作りました。

魔理沙:
 このスキームの実現は、本当にタフな交渉能力を必要とする仕事だったそうですが、『ポケットモンスター』というIP【※】が長く愛されるためには、「こういう役割分担にして、こうシェアすれば良い」という青写真が本当に見事でした。

※IP
Intellectual Property – 知的財産のこと。

魔理沙:
 「特定の会社だけが目先の利益を考えたなら寿命はこのくらいだけど、そこを我慢してポケモン全体を大きくすることで、利益もずっと大きくなる」。岩田氏は、そういう仕組みを構築した上で、関係者を説得して回ったんです。

 ゲーム会社だけでなく、出版社やテレビ局など、他業界も含めたメリット・デメリットを推察して整理することは、普通のプログラマーが扱える知識やセンスを超越している。そこが岩田氏の本当に凄いところでした。

魔理沙:
 ちなみに岩田氏は、任天堂入社後の3年間で、日米を40往復したそうです。

人望あふれる経営者、岩田聡氏

魔理沙:
 実際に、クリーチャーズやゲームフリークの人たちも、岩田氏にものすごく感謝をしていました。石原氏は「今のポケモンがこうして在ることができるのは岩田さんのおかげだと思っています」と語っていました。

 ただ、岩田氏は任天堂社長就任後に、ポケモン金・銀のお手伝いの思い出などを振り返りながら、「そのようなカタチで『ポケモン』にちょっぴり参加させてもらいましたので、わたしにとってはすごく身近に感じられるソフトになったんですよね」と語っています。

霊夢:
 ちょっぴり!? いくらなんでも謙虚すぎません?

魔理沙:
 そのあたりが、岩田氏らしいんです。

 子供から大人まで、今なお世界中で人気を博し続けている『ポケモン』ですが、その根幹は、とあるひとりのプログラマーの並々ならぬ努力と愛情によって、強く支えられていました。

 世界中から愛される『ポケモン』と、岩田聡元社長についての解説動画。ノーカットでご覧になりたい方は、ぜひ動画を視聴してみてください。


【【任天堂岩田社長・三回忌】ポケットモンスター編【ゆっくり解説】】


―関連記事―

『ロックマン』の“しゃがみ操作ができない仕様”に込められた「カプコンの教え」がおもしろ深イイ件

『ポケモン』を赤、青、黄の色鉛筆だけで描いてみたら色の三原色がよくわかる!

漫画版『ポケットモンスター』作者の穴久保幸作が語る“ギエピー”誕生秘話「5匹しかポケモンの資料がない中で連載がスタートしたんです」

「アニメ」の最新記事

新着ニュース一覧

アクセスランキング