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『モブサイコ100』はドラえもんへの回答――作者の友人漫画家が小学館漫画賞受賞作品を語る

 大ヒット漫画『ワンパンマン』の原作者・ONE氏がWEB漫画サイト「裏サンデー」に掲載している『モブサイコ100』が小学館漫画賞を受賞した。
 
 この件について、友人であり自身も現役の漫画家である山田玲司氏が、2月1日配信の『ニコ論壇時評』にて「技巧を全部捨てて、あえてパッションと構成力と、キャラクターの力、魅力だけで、勝負するやつって、本物だと思うんだよね」と語った。


乙君:
  第62回小学館漫画賞『モブサイコ100』。

山田:
 『モブサイコ100』をついに、小学館が認めましてね。あの画でね。単行本出してるんだよ、ちゃんと。小学館ってサイトも作ってくれて、原稿料も払ってくれてさ。ぱっと見プロですか? って画じゃん。元々が。

乙君:
 え……?

山田:
 ONEだって、わかってるんだからいいんだよ(笑)。

乙君:
 いや、そのアトム描いた人が言う? って(笑)

山田:
 仲間仲間。俺も電話してるシーンとか上手く描けないんだよ。

一同:
 (笑)

アンチ週刊少年ジャンプ

山田:
 俺は、技巧派は技巧派で偉いと思う。だけど、俺は、技巧派は技巧に頼りすぎてるんじゃないの? みたいなものも思うわけだよ。

 技巧を全部捨てて、あえてパッションと構成力と、キャラクターの力、魅力だけで、勝負するやつって、本物だと思うんだよね。ザックリ言って『モブサイコ100』とは何か? って言ったら。反ジャンプ主義なんですよ。

乙君:
 アンチジャンプ?

山田:
 アンチジャンプ。でも、ジャンプでもやってますけどね。あの人。

乙君:
 『ワンパンマン』やってる。

山田:
 ジャンプと言えば、「友情、努力、勝利」みたいな、それが無いかというと、あるんですよ。見てくれはジャンプ的な構造みたいなのがあるんだけど、モブサイコで言うと、「友情、努力、非戦」ですからね。戦わない。

 だから、戦って「俺はすごい、おまえもすごい」「おまえもいいやつだから仲間になるか」みたいな。結局インフレに困って最終的には、宇宙をさまようことになったのだみたいな。そういうことが、そろそろ疲れるよねみたいな感じで、能力を持っているものが、能力を封じられるって話。

 これって、懐かしの『奥様は魔女』のフォーマットだよね。『奥様は魔女』って知ってるよね?

基本フォーマットは『奥様は魔女』

乙君:
 もしかして、めっちゃ昔のアメリカのやつですか?

山田:
 そうそう。あれは「君と結婚するけど、魔法を使わないで、普通の人間として暮らして欲しいんだ」って旦那さんに言われて、頑張って使わないようにしている魔女の話なんですよ。

 娘も生まれちゃうんだけど、娘もめっちゃ魔女だし。

乙君:
 娘に遺伝するんだ。魔女が。

山田:
 お母さんがまたややこしいんだよ。「そんな旦那なんか、ただの人間なんだからクズだよ。言うこと聞くことなんかないわ」ってバンバン魔法を使うみたいな。

乙君:
 わりと、面白そうじゃないですか。

山田:
 面白いですよ。このフォーマットを超能力漫画にしているんだよ。『モブサイコ100』というのは。なかなか面白いなと思う。奥様は魔女の旦那さんは「僕はちゃんと働きたいんだ。旦那として。ひとりの人間として」みたいなことをやるわけなんだけど、旦那が困ると奥さんが、影で魔法で助けてくれたりなんかして。いい話なんだよ。

 要するにそういった能力みたいなものをポンと手に入れたときに、人間は幸福になるか、不幸になるかって話あるじゃん。いきなり宝くじで今日1億円当たっちゃったとするじゃん。多くの人が、不幸になるんだよね。金銭感覚が狂うから。

あんなこといいな♪ できたらいいな♪ なんてあるわけないだろ!

山田:
 それまでは、「今週あといくらでなんとかしよう」とか言ってるのに、いくらでも使っていいんだみたいな気分に一度なってしまうっていうのは、なかなか恐ろしいことでしょ?

 そういうふうに夢の力を手にしたあとに、不幸になる。そうしないための漫画が『モブサイコ100』ということ。

 実を言うと、ちょっと浮かぶ作品がありまして、夢の力を「こんなこといいな、できたらいいな」

乙君:
 あれあれあれ?

山田:
 夢の力をもらって、調子に乗って、失敗するって話ありましたよね。

乙君:
 なんかそれ、馴染みのある。

山田:
 みんな、最初の数ページはのび太に共感しているけど、最後エンディングになると「のび太は、俺とはちげーな」って思ってみてたでしょ? せっかくの道具を使えない。こいつバカだよなって思いながら。

 藤子先生はすごくちゃんと考えてて、「そういう夢みたいなこともいいけどさ」っていうツッコミをちゃんと冷静に入れてた。正しい大人なんだよね。

 でも、読み手はそうはしなかった。読み手にとっての『ドラえもん』というのは、無限に夢を叶えてくれる、パワーをくれるっていう、快楽装置だったんだよ。それに対する答えとして、俺は、『モブサイコ100』とは、『ドラえもん』のアンサーだと思うんだよね。で、しげおは、成長したのび太なんだよ。だから、能力を持っても大丈夫なんですよ。

乙君:
 ああ、そう言われると、確かに。

山田:
 今って、上の世代がドラえもんすぎるんだよ。高度経済成長が来ているものだから、みんな夢を真に受けて、イケるって信じてる馬鹿なんだよ。

 でも、行けないんだよ。成長の限界っていうのは、分かってたんだよ。それは、資源が枯渇したり、政局が変わった途端ダメになる。なのに右肩上がりで、ずっと行くんだって思って、システムを組んだんだよ。馬鹿な話でしょ? だって、人間が無限に増え続けるから、年金制度が上手くいくっていう。「違うよ、途中で辞めるよ」って、ツッコミがなかったんだよ。

 今のゆとりと言われる連中は、生まれたときから不景気だから、シレッと見てたんだよ。夢とか言ってるよこの人たち、いい車とかに乗ったらモテるとか言ってるわ、みたいな。

 じゃあ、今のゆとり世代にとっての超能力って何かって言ったら、日本のインフラだよ。インターネットだよ。持ってるんだよ。全部夢の力を。だけど、それで天下を獲ろうとか、俺は特別なんだって、悪役が言うセリフをしげおくんは、「そんなことないですよ」って言って、低体温でそれを見ている。

 本来自分にとっての力って何かって言ったら、汗をかいて手にする。部活動で、走って手にするものしか、自分を幸せにできないというのが、分かってるっていう。

若者の本音を描いたからこその人気

山田:
 そう。これが、まっとうな子どもたちの気分なんだよ。要するに、あそこに出てくる敵たちいるじゃん。俺は特別なんだって言ってるのは、俺たちみたいなおっさんたち、全員がかかっている病。

 ドラえもんの道具を俺だったら上手く使えるぜって思ってる。かつての、石油石炭だったり、核だったり、コンピュータだったり、大金だったり、権力だったり、軍事力だったり、全部が持っていた夢なんだけど、夢の力が人を幸せにしないぞというのが、分かってしまった。それこそが、『モブサイコ100』。

 これは、それに対しての冷静なツッコミをユーモア漫画の中で、しっかり入れてきた。藤子・F・不二雄マインドっていうのを実は、ONEくんはちゃんと引き継いでいる。

 しかも、大人として、引き継いでいる。実は、あいつめちゃめちゃ大人。我々のチャンネルは、ONEくん何回も出ていますからね。だから、あいつのロングインタビューも見ることができるので、どんな人かわかりますけども、プライベートで付き合ってても、本当に真面目な良いやつだよな。

乙君:
 LINEとかも、同じグループでやっているんですけど、今まで、ONEくんってツッコミかな? って、思ってたら、実は、ボケだったっていうのが、最近わかって。

山田:
 あいつはボケだよね。ツッコミじゃないよね。

乙君:
 ということで、モブサイコONEくん、たぶん見ていると思うので、おめでとうございます! これからも素晴らしい展開を期待しております!

山田:
 おめでとう! 良かったな。うんうん。本当にうれしいですよ。

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