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オウム信者が体感した“神秘体験”の正体を宮台真司が解説「人間の心は本人が想像しない方向に暴走する」

 7月6日、オウム真理教の一連の事件で死刑が確定した13人のうち、元代表の麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚ら教団の元幹部7人に死刑が執行されました。

 ニコニコ生放送ではライターのジョー横溝さんの司会進行で、社会学者の宮台真司さんら有識者を招き、特別番組「なぜ今なのか?元オウム真理教 麻原彰晃 死刑執行の背景を考える」が放送されました。

 オウム真理教の教団幹部たちが受けていたトレーニングと同じようなものを実際に体験したという宮台さんは、「人間の心はある種の自動機械であって、適切な順番でボタンを押すことによって鍵が外れ、本人が想像しないような方向に暴走する」とその“神秘体験”のからくりを明かし、つけ込んで利用すれば「誰でも加害者になりえた」と、この事件の最大のポイントを語りました。

左からジョー横溝さん、宮台真司さん。

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死刑以外にも感情浄化機能の選択肢はある

ジョー横溝:
 実は本日(7月6日放送当時)処刑されました新実元死刑囚が5月23日に恩赦を請願して、6月29日に補充書を提出していました。全文はTOKYO1351のFacebookに掲載されておりますが、その一部をこのタイミングで読ませていただければと思います。恩赦出願者というところで、新実さんのお名前が書いてあります。

新実智光元死刑囚が提出した恩赦出願書の補充書。
(画像はTOKYO1351のFacebookより)

 無期懲役刑への軽減の恩赦を出願いたします。贖罪の思いというところをまず読まさせてください。

 共犯の死刑確定者が「人を殺すために出家したわけではない」と後悔の念を述べていました。私も同感ですヴァジラヤーナの目的のためには殺人を肯定することは現在では時代遅れです。私たちの徳がなかった、冷静と知性が足りなかったんでしょう。深く反省しております。私は自分の命を大切にし、他者の命を大切にすることを請願します。

 私は死刑にされるよりも無期懲役刑となり、遺族被害者と交流することでお互いが救われると信じています。どうぞ遺族被害者のためにも生きて償うようご支援願います。私は人の責任にはしません。自分を哀れむくらいなら最初から人を殺すべきではありません。自らの意思で実行した時に、既に覚悟があったはずではないか。自ら進んだ道で何をいまさら被害者ぶるのか。

 たくさんの人の人生を、その人の許可なく終わらせた。その私たちに、勝手に死にたい時に死ねるわけがない。死から目を背けるなと日々自分に言い聞かせています。もし遺族被害者、そして生きとし生けるものの役に立つなら、生きて償うことに残された命を捧げます。

 という文章が出ているんですけれどもね。どうですかね、宮台さん。

宮台:
 日本はアムネスティからも指摘されている、先進国ではほぼ唯一の死刑存置国。アメリカはもちろん州によって死刑を行わない国もあるということですね。韓国はもうずいぶん長い間モラトリアムを続けてきているというところがありますよね。

 この新実氏の文章の中には、僕らはそういう流れを知っている者からすると、当然のフレームが出ています。

ジョー横溝:
 どこですか?

宮台:
 コミュニケーションを通じて、被害者の家族を簡単に言うと、「癒やす」と言うとまるで上から目線の感じだけれども、被害者の心をできるだけ解きほぐすように、できるだけの力を注ぐということですよね。

 あるいは別の言い方をすると、ちょっと刑法理論的な話で申し訳ないけれど、なぜ処刑は存在するのか。あるいは広い意味では刑罰は存在するのか。ジョーさんとも繰り返しお話してきたものだけれども、関係がある。

 重罰化によって犯罪を抑止するため死刑にすれば人が犯罪を犯さないだろう。それは国連統計から言えばパーフェクトに否定されている。死刑を廃止しようがしまいが、例えば殺人的な、殺人にかかわるような事案の発生率には何の変化もないということが既に分かっているんですね。

 もうふたつ。どういう機能が今まで期待されてきたのか。ひとつは感情的回復というもので、被害者の家族あるいは被害者、あるいは社会が死刑にすることで気が済む。気分がすっきりするというカタルシス機能。感情浄化機能ということですよね。

 でもこれについては、もし感情的な回復が重要なのであれば、死刑以外の手段でその同じ機能を調達ができるということですね。これが死刑廃止運動の根幹にある。日本のいわゆる人権主義者たちは、死刑が人権というフレームに触れるということで反対ばかりしていると。これはちょっと国際的標準から見るとダメなんですね。  

 感情的な回復の機能が死刑にあったのであれば、それをどういう別の手段で調達をするのかというところで、コミュニケーションが持ち出され、言わば媒介ですね。被害者と加害者の間のメディエーションをすることによって、死刑が果たしていたような感情的な回復を調達しようっていう。 

 もうひとつは社会的意志貫徹という話だけれど、それは面倒くさいから今ちょっと省きましょうね。そういう意味で言えば、新実氏の書いている文章は日本だけは例外だけれど、国際的に標準の死刑廃止の流れに沿う、非常にコミュニカティブな価値に満ちたものですよね。

「死刑であっても、人の命を奪うことは嫌」。犯罪被害者の家族の葛藤

ジョー横溝:
 感情的回復という言葉が出てきたのですが、きょうの執行を受けて被害者の関係者のコメントも続々と入ってきておりますので、いくつかここで紹介させていただければなと思います。地下鉄サリン事件で駅員の夫を亡くし、現在は被害者の会の代表を務める高橋シズヱさんが会見を開きました。会見でこんな内容をシズヱさんは述べております。

 その時が来たなという、それだけしか思いはありません。麻原の執行に関しては私は当然だと思っています。ここまで23年以上かかってしまい、亡くなった人や関係者、主人の両親、私の両親はもう既に亡くなっているので、この執行のニュースを聞くことができなかったのが残念だろうと思います。

 麻原、その後井上、新実、土屋、中川、遠藤、早川という名前を聞いた時には、やはり動悸がしました。今後のテロ防止という意味で、もっと彼らにはいろいろなことを話してほしかった。それができなくなってしまったという心象はあります。

 ということを高橋シズヱさんは会見で述べていらっしゃいます。

宮台:
 今のことについてコメントすると、いろいろな研究の中で分かっていることは、感情的な回復の中には被害者と加害者のコミュニケーションによって与えられるものと、もうひとつ二度と同じようなことが起きない、政府的あるいは政策的な枠組みを作りましたということも、非常に大きく機能することは分かっているんですね。

 こうしたことが検討された上で、日本以外の先進国は死刑を廃止したんですよね。死刑廃止世論、これを重要視する立場を「左巻き」っていうふうに言うのであれば、日本以外世界中が左巻きということになっちゃうんですね。で、そんなわけはない。僕の言葉で言えば、右か左かじゃなくて、まともかクズかなんですよね。

 でもクズはクズで本人が悪いわけじゃないからね。批判してるわけじゃないけれどさ。日本以外が全部左巻きって、日本以外の死刑廃止国に行って言ってみろよ(笑)。

ジョー横溝:
 ちょっとそれ以外にも被害者遺族のコメントがありますので、いくつか紹介させてください。坂本弁護士のお母様でいらっしゃいます、現在86歳のさちよさんが、弁護士事務所を通じてコメントを発表しております。全文を読むのに時間がかかりますので、一部のみの紹介とさせていただきます。

 私も麻原は死刑になるべき人だとは思うけれど、他方ではたとえ死刑ということであっても、人の命を奪うことは嫌だなという気持ちもあります。事件が起きて今まで長い時間だったんだなと思います。3人には終わったね、安らかにねと言ってあげたいです。

 ということをお母様のさちよさんが、弁護士事務所を通じてコメントを出しております。もうひと方です。お父様の仮谷清志さんを亡くしました息子さんがコメントを発表しております。

 今の気持ちはという質問に対しまして、安心したと言うか、日本の法律の手続きに基づいて適正な執行がなされたということで、きちんと手続き通り進めてくれた。ある意味では期待通りの結果だと思う。一方で信者らは神として崇める可能性があると思うので、オウム真理教という存在自体はウォッチしていかなければならない。

 そんなコメントを発表しております。宮台さん、いかがでしょうか。

宮台:
 死刑廃止論を支持する犯罪被害者というのは、実は世界中にそれなりに大勢いて、きょうは死刑廃止論の話、あるいは存置問題ではないけれどね、それにかかわることがあるので少しだけ知識を頭に入れておいてほしいと思うんだけれど。

 理由があれば人の命を奪っていいというふうに考える。オウムの今回の教団幹部たちがそうだったんだよね。理由があれば人の命を奪っていいという、この立場に自分も与するのは自分の尊厳に障ると。人を殺したやつは殺してもいいんだ、これは社会の害になるやつは殺してもいいんだというような、そういう理屈とさして違わない。それは自分の尊厳に障る。

 気持ちとしては、復讐として応報ですよね。ぶっ殺したいという気持ちはそれはそれであるけれど、それで身を任せれば自分はクズと同じだというふうに思わないでもないということで、葛藤の中で死刑を廃止に賛成する犯罪被害者の家族とかも実はいるということなんですよね。

 死刑というのはご存知のように、理由を踏まえた上での条件付き、つまり条件によって許容された殺人なんですね。どこでも古い社会にはこういう理由のある殺人としての処刑というのがあったわけだけれども、それが今後あるべきなのかどうかってことを議論する時に、何が材料になっているのかということは、今紹介したことということですよね。

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