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目黒虐待死事件 親から結愛ちゃんを引き離せなかった児童相談所職員の“意識の欠如”とは【話者:細野豪志・上田令子・安積明子】

 東京都目黒区で虐待を受けたとされる船戸結愛(ゆあ)ちゃんが3月に死亡した事件で、父親と母親が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕・起訴されました。父親は結愛ちゃんに暴行を加えてけがをさせたとして、香川県警が昨年2月と5月に傷害容疑で書類送検しており、さらに一家が目黒区に転居した後、県の児童相談所から引き継ぎを受けた品川児童相談所が家庭訪問していましたが、結愛ちゃんには会えなかったと言われています。

 フリージャーナリストの安積明子さんが司会を務める「あづみの永田町チャンネル」に、衆議院議員の細野豪志衆議院議員、東京都議会の上田令子東京都議会議員が出演し、虐待のサインを見逃さないためにという議題に上田議員は「誤解であったとしても罰せられることもなく、名乗らなくても大丈夫」と、とにかく通報することの重要さを主張。また事件については児童相談所に対し「非常に想像力と当事者意識が欠けていた」と話し、細野議員も「想像力が働いていれば、こうならなかった」とコメントしました。

左から安積明子さん細野豪志衆議院議員上田令子東京都議会議員

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通報は国民の義務。「おや?」と思ったらすぐに189番

上田:
 児童虐待防止法【※】の中で、通報義務が実は国民にあるわけです。義務を果たすという意識がやはり浸透していないし、それで仮に誤解であったとしても罰せられることも何もなくて、名前も名乗らなくても大丈夫なんですよ。

※児童虐待防止法
「児童虐待の防止等に関する法律」の通称。第6条で児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかにこれを市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所または児童委員を介して「通告」しなければならないとしている。

 そういうことをまだ周知徹底されていませんね。また市町村も頑張ってはいるんですけれども、その他の虐待死事件でも被害者の声がかなり聞こえていたであろうに、なかなか通報が行かなくて対処が遅れた、そういったことが根源になっているのかなというふうにも思っております。

 だからとりあえず、ガセの可能性があっても通報してほしい。通報の結果、もしガセであっても、通報者は責められないということを周知をしていくということと、今回のようなことを見聞きしたら、通報して構わないんだっていうことを、私はこの番組を見てくださっている皆さんにもお伝えしたいと思います。

安積:
 そうですよね。確かに厳しいしつけの場合、外から見たら虐待とちょっと分別つかないようなところがあって。親に叱られて子どもが泣き叫んでいるということもありますが、それが必ずしも虐待になるわけではない。また虐待で通報されるのを恐れて、親が子どもを強くしつけられないということがあっても困りますね。

上田:
 それが女性の悲鳴だったらどうですか。結構皆さん110番しますよね。児童虐待の場合は189番というのがあって、虐待を受けた子どもを見つけた場合、あるいは子育てに悩んだ場合は通告・相談できるのです。

 だから子どもの泣き声がやっぱりちょっと尋常ではないような場合は、誰でもためらわずに189番をかけていただきたい。「おや?」と思う人間の本能というのは、そんなに外れたものではありません。匿名で通報も可能ですし、嫌な思いもさせられることはなく、めんどくさくないということをもっと周知しなければいけませんね。

「それぞれがやってくれるだろうと……」。想像力と当事者意識の欠如が招いた悲劇

安積:
 ところで今回の目黒の児童虐待のケースなんですけれども、そもそもどの辺りが一番の問題だというふうに先生は感じていらっしゃいますか。

細野:
 このケースに関してはもっと詳しい方がいると思うので、上田さんにお話いただいたほうがいいかもしれないけれど、やっぱり父親が二回も書類送検されている点が尋常ではありません。

 そのような場合には児童福祉法の第28条で、措置として子どもを親から引き離すことができるんですよ。しかし香川県の児童相談所はそれをやらなかった。やらなかった背景には、たとえば一時保護所がいっぱいだったりとかという事情があったのでしょう。たとえばですよ。

 もしくはその後、いろいろな対応するのに親とのトラブルを児童相談所が若干躊躇したかもしれない。いろいろなケースがあると思うんですけれど。やっぱり児童福祉法第28条に踏み切るという判断をやりきれなかったところ、この点は非常に大きいと思いますね。

 それこそ結愛ちゃんが暴行を受けていたことは警察も知っていたし、病院でもいろいろなことが言われていたわけです。ですからそこの基準が本当にどうあるべきかというところからもう一回見直した方がいいと思いますね。それともうひとつは、結愛ちゃんの場合は香川では幼稚園に行っていたけれど、目黒に引っ越してからは幼稚園に通っていなかったという点です。

 もし幼稚園に行っていれば、いろいろな人の目がそこにあるので、体の傷や成長不良がわかりやすい。でも幼稚園に通っていなければ、他の人の目に触れることはありませんよね。実は幼稚園と保育園にも行っていない子どもで5歳というのは、一番微妙な年齢なんですよ。3歳児までは検診があり、6歳からは小学校に入るのですが、その間の期間がすっぽりと抜け落ちる。

 そうした年齢の子どもで、もしかしたら我々が知らないところで虐待にあっている子どもがもっといるかもしれない。今回の結愛ちゃんの事件を契機に、そのような問題も考えなければいけません。

安積:
 制度のはざまにすっぽりと抜け落ちたところに、悲劇が起こる一因があったということですね。

細野:
 そもそも児童福祉法第28条はそうした範囲をカバーするために作られた条文なんです。さらにはもっとひどいケースに関しては親権停止というのも、これも新たに民法で導入されてやるようになっているんだけれども、児童相談所の現場とか本当に現実のケースということになると、なかなか適用されていなかったという。

 法律改正が必要だというよりは、そこの運用の問題が非常に実は深刻な問題をはらんでいるんじゃないかと思いますけれどね。

安積:
 上田先生はどうお考えですか。

上田:
 端的にいえば今回の事件の一番大きな原因は、品川児童相談所が結愛ちゃん本人に会うことを怠ったことだと思います。香川県側からは細野議員もおっしゃったように、父親が二度も書類送検されているというデータがしっかりと届いていたはずです。

 本件は引っ越している、お父さんは働いていない、ステップファザー【※】であるというようなリスクがいくつもあって、さらに父親には二度も書類送検された記録がある。なのにそこでどうして結愛ちゃんに会わせろと強く言わなかったのかと。いいんですよ、児童相談所の職員が帰されても。しかしなぜ、警察の協力を得なかったのでしょうか。

※ステップファザー
継父。

 もし警察官が出動していれば、先ほどのルール、いろいろな法律を行使しなくても、(5歳児にしては体重が異常に少ない)12キロの少女がいればその場ですぐに警察は保護ができたはずです。

 そこを怠ってしまったということに加えてさらに問題は、小学校の説明会に母親が小さな弟を連れて来ていたのに、教職員が結愛ちゃんを連れて来なかったことに留意しなかったことです。入学する本人が来ていないのを疑問に思わず、「なぜ結愛ちゃんは来ないのですか」とか「誰が結愛ちゃんをみているのですか」と確認しなかったのは残念です。しかも説明会には子ども家庭支援センターの職員も来ていたんですけれども、そこでもまた落ちてしまった。

 ですから、教育者がいて、子ども家庭支援センターのプロがいて、しかも児童相談所もかかわっていたにもかかわらず、なぜ警察にそこですぐに見に行ってもらわなかったのかと。その時点では結愛ちゃんは生きていたわけですから、救出できたはずです。

 非常に想像力と当事者意識が欠けていたのだなというふうに思っております。

細野:
 あとはなぜ香川県が指導措置を解除したかという点ですね【※】。それがずっと引き継がれてたら、品川児童相談所も対応が違ったのではなかったかと思います。

※船戸雄大容疑者が2017年5月1日に傷害罪で二度目の逮捕をされた後、7月31日に香川県児童相談所は結愛ちゃんの一時保護を解除して指導措置を開始した。12月末に同容疑者が単身で目黒区に転居したため、同児童相談所は2018年1月4日に指導措置を解除している。

上田:
 それは、父親がひとり先に上京して、母親と結愛ちゃんと弟だけになったからです。暴力をふるう父親がいなくなったことで、母子関係が安定したんですね。そこで香川の児童相談所は措置解除してしまったのですが、その判断をどうとるかですよね。

細野:
 たとえば深刻なケースでは引っ越しても解除はもちろんしないし、児童相談所は引っ越し先の自治体に引き継ぎするためにわざわざ行くんですよ。これはきちんとした公務で、出張になる。それなのになぜ今回……。これ、相当深刻なケースじゃないですか。

上田:
 そうですね。

細野:
 現場のみなさんも大変だと思うんだけれど、本当に残念ですよね。

上田:
 それぞれ担当者がいるのだから誰かがやってくれるだろうと、それぞれが思ってしまったことですね。

細野:
 引っ越しした先には父親がいて、また結愛ちゃんに暴行を加える危険性がある。これも想像すればわかるわけで、先ほど上田さんがおっしゃったようにもうちょっと想像力が働いていれば、こうならなかったですよね。

上田:
 そうなんです。

安積:
 しかし香川県から品川児童相談所に送った書類には、解除したものの指導措置をしたという記録は残っていたわけですよね。  

上田:
 はい。東京都としては「解除しているから、ハイリスクというふうには思わなかった」と言っていましたが、「書類送検二回でお父さん働いていないことは問題があると思わなかったのか」「一回会いに行ったけど、本人に会わせてもらえなかったのは問題ではないのか」って言ったら、これは東京都としても「ハイリスクと考える」という風に変わりました。

安積:
 行政が危機感を持たなければいけないということですよね。

上田:
 児童相談所も忙しいのは分かっているから、とりあえず地元のおまわりさんに見てもらえばいいだけの話じゃないですかと。そもそもどれがハイリスクか、ハイリスクじゃないか、措置が解除されているか、してないなんていちいちやっていたら、もう5分前に救えた命が救えなくなっちゃうので。

 とにかく現場では縦割りじゃなくて、誰か行ける人が行ってみるということが大事だと思うんですよね。まずは落ちこぼれをなくすことです。そもそもハイリスクかどうかを誰が判断するんですか。命は失われたら、もう取り戻せない。その重大さを常に意識してほしいですね。

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